『豊臣兄弟!』井上和が作り上げる“新たな茶々像” 乃木坂46で培った経験も武器に

 だからこそ、秀吉との関係も興味深い。茶々といえば、父を滅ぼした織田家に仕え、さらに母と義父・勝家(山口馬木也)を死へ追いやった秀吉の妻となった人物として知られている。そうした史実だけを並べれば、両者の関係にはどうしても悲劇性や生々しさがつきまとう。だが、『豊臣兄弟!』は、秀吉が茶々を一方的に求める構図にはせず、第39回では、むしろ秀長が後継者のために茶々を妻に迎えるよう勧め、秀吉は寧々(浜辺美波)の心中を思って猛反発する。

 そして何より重要なのは、茶々自身がどう決断するかだろう。井上は出演発表時、茶々について「自分の大切な人のために最善の策を取ろうと強く立ち続けた女性」と語っていた(※2)。秀吉のもとへ行くことが、仇への屈服なのか、それとも妹たちや自らの立場を守るための選択なのか。もし後者として描かれるのであれば、これまで井上が積み上げてきた茶々の強さともきれいにつながる。

 井上はこれまで、『乃木坂46"5期生"版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」2024』で月野うさぎを演じ、2025年の『スプリング!』(テレビ朝日系)では地上波ドラマ初出演にして初主演を果たす。さらに映画『トイ・ストーリー5』では日本版声優にも挑戦するなど、舞台、ドラマ、声の芝居と異なるフィールドで経験を重ねてきた。まだ出演作こそ多くはないが、そのたびに求められる表現へ柔軟に対応し、自身の引き出しを増やしている印象があり、大河ドラマ初出演ということを忘れてしまうほど、井上はここまで作品の中に自然に溶け込んでいる。

 制作陣がオーディションで評価したのは「年齢以上の落ち着きと妖艶さ」だったというが、現時点で強く感じるのは、それに加えて感情を出しすぎない芝居のうまさだ。茶々はこの先、秀吉との間に子をもうけ、豊臣家の中心人物になっていく。求められる感情も、今まで以上に複雑になっていくだろう。

 乃木坂46の中心メンバーとして知られる井上にとって、『豊臣兄弟!』は役者としての印象を大きく変える作品になるかもしれない。これまで強さを中心に見せてきた茶々が、秀吉との関係を通してどんな表情を見せるのか。井上和による新たな茶々像は、ここからが本番だ。

参照
※1. https://realsound.jp/movie/2026/08/post-2485725.html
※2. https://realsound.jp/movie/2025/04/post-1983090.html

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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