『豊臣兄弟!』ついに“豊臣秀吉”誕生 間宮祥太朗の歓喜の表情とエネルギッシュな芝居が光る

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第38回「和を以て、大和をなす」は、大和郡山に“秀長の国”が誕生するまでを描く、一風変わった回である。

 大和国の領主として郡山城に入った秀長(仲野太賀)だったが、城下町・郡山は閑古鳥が鳴く有様。大和国の財政を根本から建て直すべく、奈良の豪商・川窪清俊(カトウシンスケ)に座(既得権益)を廃止し、郡山への移転を持ちかけるが商人たちはこれを拒み、国を動かしているのは“あきんど”だと主張する。対して、秀長はひと月で郡山を人が集まる盛えた街にしてみせると宣言した。秀長の城下大改革、新しき戦だ。

 ひと月で何も変わらなけば川窪たち豪商に従うと約束してしまった秀長。焦る家臣団を前に、秀長が思い浮かべていた策は、大和郡山で新たに店を出した筆屋の主人・才蔵(間宮祥太朗)の商いを成功に導き、それを起爆剤に各地から商人を呼び込もうというものだ。

 その鍵を握るのが、絵師・狩野永徳(片岡鶴太郎)。屏風の端から端までかすれることなく一気に線を引けるような筆を作れと、狩野は言う。狩野のお墨付きとあれば、才蔵の店も繁盛し、街全体も賑わうはず――。秀長と家臣団、さらに慶(吉岡里帆)たちも一丸となって、才蔵の筆作りを支え、鼓舞するものの、墨をたっぷりと含ませるいい毛の組み合わせはなかなか見つからない。鹿、馬と試し、万策尽きたと思われたそのとき、秀長の娘・末(池端杏慈)が腰飾りにつけていた、ふわふわとした毛(現代のファーテール、ファーしっぽ)が才蔵の目に止まる。それは末が堺で買い求めた天竺伝来のヤクの毛で、狩野も納得する最高の書き味の筆が完成した(宝物のヤクの毛をばっさり持っていかれたりと、少々かわいそうな役回りの末が気にかかる)。

 秀長が試し書きに筆で書いたのは「和」の字。大和の国は、大いなる和の国。「これからも皆で力を合わせて、もっともっと豊かな国にしていこうぞ!」という秀長の言葉に、家臣団は口々に奮い立つ。結果、秀長の城下大改革は成功。川窪ら商人たちも手のひらを返す、町おこしとなる。郡山を新たな商業拠点として再構築した秀長の戦は、史実の一部を描いたものではあるが、筆屋といったいわゆる下位の商人を成功させることで、それを呼び水とする描写は史実の誘致政策と一致している。風格のある絵師としての片岡鶴太郎の佇まい、何より筆を完成させた才蔵を演じる間宮祥太朗の歓喜の表情とエネルギッシュな芝居が素晴らしかった。

 余談ではあるが、慶を演じる吉岡里帆は8段の腕前を持つ書道家。劇中でもその実力が発揮されるシーンがあり、以前放送になった『「豊臣兄弟!」トークライブin奈良』では学生時代に奈良の筆を購入しに行っていたと明かしていた。

 一方、大坂では、秀吉(池松壮亮)が帝の許しを得て新たな氏を得ることなった。その名は豊臣。「万民を豊かにする」という秀吉の思いが込められており、万民とは寧々(浜辺美波)や秀長たち家族、豊臣家の重臣、そして秀吉の目の前で話を聞いている初(田牧そら)、江(西川愛莉)、物陰で耳をそばだてている茶々(井上和)も万民=大切な人たちに含まれていた。浅井三姉妹で唯一、父の仇である秀吉に心を開かずにいた茶々だったが、自身を思う秀吉の寛大な心に触れ、初めて微笑みを見せるのだった。

 第39回は「茶々の本心」。ここまで少しづつ描かれてきた茶々の機微が、秀吉の跡継ぎとなる息子たちを産む側室として迎え入れられることにより、一気にフォーカスされる。高校時代に弓道部に所属していた井上和の弓の腕前が芝居へと昇華されている。茶々とは対照的に、跡継ぎを残すことができない寧々の悲しみ、浜辺美波の演技も見どころとなりそうだ。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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