『コントと音楽』第7弾、千秋楽レポート 柄本時生、西野七瀬らが作り上げた最高峰の夜

 鮮やかなセリフのやり取りによって、キャストそれぞれの芝居にも確かな熱が生まれていく。芝居とは、しばしば野球のキャッチボールに例えられるが、その全てが当てはまるわけではないが、ピッチャーを担うのは西野、山中、受け手が鈴木に柄本、足立と言えるだろう。柔らかな関西弁から走り出した西野の演技は、やがて怒りのトップギアへと突入していく。その一方で、“マミ”役の鈴木を前に涙する一幕もあり。変速を繰り返す緩急ある芝居は、笑いも、感動も作り出していく。

 山中に関しては、“ミシェル山中”に触れないわけにはいかない。黄色、または茶色い歓声を浴びながらステージに現れた山中は、マイケル・ジャクソンの伝説のステージを彷彿させるかのような勇ましい出立ちで、1分……もしくはそれ以上の間を使い、観客の視線を釘付けにする。この第三場は、事前に講演セミナーのアンケートがスタッフ(に扮した柄本と足立の姿も)から配られるところから始まり、「山中ダイジェスト!」のコールが観客にも求められる、観ているこちらもカロリーの非常に高いブロック。すぐ隣の観客に顔をギリギリまで近づけたりと、絡まれるかもという緊張感もありながら、ここまでの流れをぎゅっぎゅっぎゅっとダイジェストで振り返る場面では、得も言われぬ感動が込み上げてくる。第二場での哀愁漂う父としての姿と情熱あふれる“ミシェル山中”としての振り切った姿。これを15公演完走した事実に感服するばかりだ。

 もちろん、鈴木の西野への温かな「ありがとう」、娘として父への葛藤する気持ちをぶつける足立の芝居、西野にプロレスを仕掛けたりと飄々としながらも屋台骨として舞台全体を支えていた柄本と、5人が絶妙な塩梅で掛け合うことで成立していることは言うまでもない。

 そして、それぞれのコントに接続されている音楽も本作の見どころの一つである。COTTON CLUBという名の由緒正しきステージにて演奏されるジャズアレンジの楽曲の数々。第一場終わりにはYUKI「JOY」(西野七瀬&鈴木杏樹)、第二場終わりにはOriginal Love「接吻」(柄本時生&山中聡)、第三場終わりにはヒグチアイ「東京にて」(西野七瀬&足立梨花)、ラストはみんなとぎゅっと一つになって西城秀樹「走れ正直者」がキャスト全員で歌われる。

 今では人前で歌うこと自体が希少な西野を筆頭にして、4曲とも貴重なカバー楽曲であるのは前提に、「JOY」の〈イエス、ノー どちらでもないこともあるでしょう〉、「接吻」の〈長く甘い口付けを交わす〉、「東京にて」の〈誰かの作った方程式じゃない 新しい答えを作ろうよ〉といった歌詞がそれぞれのコントを想起させる見事な選曲であるように感じた。「接吻」の途中に第一場で印象的に登場する小田和正「たしかなこと」を入れ込む荒技や、エンディングとしてベストな「走れ正直者」の選曲も素晴らしかった。カーテンコールを受け、鈴木が楽屋にいるバンドメンバーを呼び寄せたのは、キャストだけでなくバンドメンバーと一緒に舞台を作り上げてきたことの証だ。

 コロナ禍以降、ライブ配信の視聴が当たり前になる一方で、現場で実際にステージを観ることが何にも代え難い体験であることを誰もが実感したはず。『コントと音楽』はそのことを改めて強く感じさせる、会場一体型の唯一無二のエンタメショーだ。

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