『コントと音楽』第7弾、千秋楽レポート 柄本時生、西野七瀬らが作り上げた最高峰の夜
柄本時生、西野七瀬、鈴木杏樹、足立梨花、山中聡が出演する舞台「コントと音楽 vol.7『今宵、丸の内で』」が、9月13日にCOTTON CLUBにて幕を閉じた。9月4日に開幕し、9日間15公演にわたって上演されてきた、その千秋楽。柄本は「なんとか完走しました」と感慨を抱きながら、「みなさん、日々を大事にしましょうね。疲れたらまたこれやってるんで、ぜひ観に来てください。みなさんが楽しんでいただけるような芝居をやりますので、またぜひお会いしましょう!」と集った観客に再会を誓った。
2019年にスタートし、今回で7回目を数える『コントと音楽』。恥ずかしながら、筆者はこれが初めての観劇となったのだが、終演後、だいぶ食らいながら最寄りの東京駅へと向かった。いいライブや映画を観た後にやって来る、物思いに耽る時間。まず驚くのは、会場一体型のエンターテインメントショーであるということだ。「会場の一体感」「唯一無二」といった表現は普段あまり使いたくないのだが、ここではその表現がしっくりくる。
開演4分前、西野がスッと店内に姿を見せ、中央のテーブル席に腰を下ろす。待ち合わせの相手が来るので注文は後から――そんなシチュエーションから舞台はいつの間にか幕を開けていく。メインとなるステージは四方八方を観客に囲まれたテーブル、ではあるが、キャストが店のスタッフ役として歩くことも考えれば、店内全てがステージと言えるだろう。SS席からA席までランク・エリアが定められているものの、ここまで全ての席が距離の近い公演もなかなかない。出ずっぱりのキャストにしてみれば逃げ場がないとも言えるが、およそ180席の丸の内にあるライブレストランという、品格漂う会場だからこそ成り立っている部分は大きい。例えば、フードやドリンクを注文することも、上演中にトイレに立つこと、観客の拍手、笑い声、時には表情でさえも、観劇を左右する要素となり得る。観る側の感情がキャストにも肌感覚で伝わるような、和やかであり、時に緊迫した空気感。キャストやバンドメンバーだけでなく、観客も一体となって作り上げるエンタメとも言えるだろう。
公演は約90分間。大きく分けて3つのコント(短い物語、寸劇)とその幕間を繋ぐ音楽(ライブステージ)にて構成されている。簡潔に説明すれば「丸の内を舞台に、男と女の悲喜交々を描くオムニバス・コメディ」ではあるのだが、飯塚健による脚本・演出・選曲と、キャスト5人による芝居と歌唱、バンドメンバーの椎野恭一 (ds)、西口明宏(sax)、高橋陸(b)、別所和洋 (p)による物語を彩る演奏によって、『コントと音楽』が形成されている。
第一場は今回が『コントと音楽』初参加となる西野と鈴木がメインとなる、二股がバレた話。第二場は本シリーズにおいてほぼレギュラー出演の山中と、2度目の参加となる柄本、4度目の参加となる足立を主体とした、歳を取ることと折り合い。第三場は“ミシェル山中”こと山中による“集い”に観客もぎゅっと巻き込まれていく“山中ダイジェスト”。風刺の効いた飯塚のシニカルな脚本もさることながら、筆者が感銘を受けたのは、セリフの言葉選びだ。
例えば、西野が彼氏である轟の浮気を見抜く根源となった、りっしんべんの書き方。字は体を表すというが、「ぼうてんてん、てんてんぼう……」とまるでりっしんべんが絡むように、冷静に、次第に情熱的となる西野のアクセント。さらに「苦悩」「後悔」「怨恨」「憔悴」「懺悔」「憤慨」といったりっしんべんの連続で怒りを露呈させる。また、轟に始まり、浮気相手の宇佐美、拍車、両輪、カクテルのサイドカーといった全て車に関係することから何かあると山中が考察するも、憶測だとぶった斬ったあとの「悔恨の極み」という返しも見事。ほかにも、第二場には「タルタルの良さたるやなんたるや」「切羽は詰まらない」「五臓六腑に落ちてるわけじゃない」、第三場には「スンッていくよ。as soon as」といったセリフもあり、言葉運び、言葉遊びが炸裂している。観客全員に配られる冊子のインタビューを読むと、本読みの時点から「腑に落ちる」を「五臓六腑」にしたいという話が出ていたようだ。さらに、西野と鈴木は同じ関西出身ということで、家族らしい、親しげな関西弁をポロッと出る演出を取り入れていたようだ。分かりやすさよりも、小気味いい、語感を求めるのは、歌詞の書き方にも似ている。そんな部分からも“コントと音楽”を感じさせた。