『SAKAMOTO DAYS』MVPは上戸彩? 目黒蓮のアクションに“感情”を与えた“声”の力
その意味で思い出されるのが、声優としての代表作のひとつ、『ズートピア』シリーズのジュディ・ホップス役だ。上戸の声には、明るく通る軽やかさと、相手をまっすぐ引き込む素直な抜け感がある。アニメ版『SAKAMOTO DAYS』で東山奈央が演じた葵は、その明るさや愛嬌で坂本家の日常をやわらかく照らす太陽のような印象が強かったが、実写版で上戸が演じる葵には、実写のインパクトもあり“肝っ玉母さん”のような頼もしさが強められていた。
葵を演じるにあたって、上戸は“新しい葵像”を作るのではなく、「どうやったら葵に近づけるか」を常に考えていたという。見た目から少しでも近づくために、髪を黒く染め、前髪も切ったと語っている(※2)。原作の葵が持つ明るさや芯の強さを、実写の人物としてどう立ち上げるか。そこに、上戸の役への向き合い方が見える。
家族で訪れた遊園地に刺客が現れる場面では、葵の“怒り声”が響くシーンも印象的だ。一連の戦闘が終わったあと、事情を知った葵は坂本、シン(高橋文哉)、さらには敵だったボイル(小手伸也)まで横一列に並ばせ、キレながらの説教を始める。コメディとして笑いを生みながらも、ここで見えてくるのは葵からの愛でもある。危ないことをしたら、きちんと叱る。家のルールがきっぱりと言語化されることで、坂本家における“守るべきもの”の輪郭が見えてくるシーンだ。
この場面について、上戸は福田雄一監督から「もっと怒ってくれ」と注文が入り、かなりドスを利かせて演じたと明かしている(※2)。一方で、葵の強さは坂本を萎縮させるためのものではない。この夫婦の温度感を考えるうえでは、坂本役の目黒の提案もあったとのこと。脚本段階では葵の怖さがより強く出る描写もあり、坂本が葵を怖がって一緒にいるように見えないよう、関係性の見せ方を調整したいという相談があったとも語っている(※3)。
その関係性がよく表れているのが、坂本の命を狙う「X(スラー)」一派の不死身のサイボーグ・鹿島(塩野瑛久)との戦いだ。激しい戦闘の最中、坂本のもとに葵から「花が起きているうちに帰るように」と電話がかかってくる。電話ではコミカルなリアクションを挟みながらも、葵の言葉を受けた坂本はより気合を入れた様子で鹿島との戦いに向かっていく。目黒蓮が見せる一段と力の入ったアクションも見事で、坂本が何のために戦っているのかが一瞬で伝わってくるシーンだ。
だからこそ、目黒が提案したという関係性の調整は、本作において重要だったのだろう。坂本は葵を怖がっているのではなく、好きで、信頼していて、彼女の言葉をまっすぐ受け止めている。その温度が見えているから、アクションの派手さにも感情が乗る。
殺し屋たちの戦いが作品の見せ場を担うなら、葵のいる日常は、その戦いに意味を与える感情の核だ。坂本太郎が「もう人を殺さない」と決めた理由。その選択に説得力を与え、作品の中心に家族の実感を宿らせていることこそ、俳優・上戸彩が『SAKAMOTO DAYS』にもたらした、かけがえのない力ではないだろうか。
参照
※1. https://skmtdays-movie.jp/news/038/
※2. https://www.biteki.com/life-style/others/2123591
※3. https://www.buzzfeed.com/jp/munenoriumeki/aya-ueto-interview
■公開情報
『SAKAMOTO DAYS』
全国公開中
出演:目黒蓮、高橋文哉、上戸彩、横田真悠、戸塚純貴、塩野瑛久、渡邊圭祐、北村匠海、八木勇征、生見愛瑠、小手伸也、桜井日奈子、安西慎太郎、加藤浩次、津田健次郎、志尊淳
原作:鈴木祐斗『SAKAMOTO DAYS』(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
脚本・監督:福田雄一
主題歌:Snow Man「BANG!!」(MENT RECORDING)
製作幹事:エイベックス・ピクチャーズ
制作プロダクション: CREDEUS
配給:東宝
©︎鈴木祐斗/集英社 ©︎2026 映画「SAKAMOTO DAYS」製作委員会
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