『風、薫る』見上愛にハマった人は必見 『光る君へ』『国宝』などで見せた“別人級”の魅力

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』(NHK総合)で、一ノ瀬りんを演じている見上愛。上坂樹里とともにW主演を務める本作で、見上は明治の時代を生きる女性のひたむきさを、まっすぐな眼差しと繊細な表情で表現している。りんは、最初から強く前へ進める人物ではない。迷い、傷つき、周囲の言葉に揺れながらも、その時々で自分にできることを探していく。大きな声で感情を見せるのではなく、表情や間で心の動きを伝える芝居には、見上がこれまでの出演作で磨いてきた魅力が表れている。

『風、薫る』写真提供=NHK

 見上の魅力は、作品ごとにまったく違う表情を見せるところにある。静かな眼差しで物語に深みを与えたかと思えば、別の作品では不安や危うさを抱えた人物を演じ、また別の作品では恋にまっすぐ突き進む主人公にもなる。大きな芝居で感情を見せるのではなく、視線や表情、言葉の間で人物の気持ちを伝えるのが見上の強みだ。一方で、感情が大きく動く場面では、作品全体の空気を一気に変える力もある。

 本稿では、『風、薫る』で見上愛に興味を持った視聴者に向けて、彼女のギャップが堪能できる出演作5本を振り返りたい。

『衝動』

『衝動』©︎映画「衝動」製作委員会

 2021年公開の映画『衝動』は、見上の初期キャリアを語るうえで外せない一作だ。倉悠貴と見上がW主演を務めた本作は、2020年の東京・渋谷を舞台に、孤独を抱える少年・ハチ(倉悠貴)と、トラウマによって声を出せなくなった少女・アイ(見上愛)の出会いを描く。居場所を持てず、社会の輪郭からこぼれ落ちたような2人が、互いの孤独に引き寄せられていく青春サスペンスである。

 見上が演じたアイは、自分の思いをうまく言葉にできない人物だ。そのため、感情の動きはセリフではなく、視線や表情、身体のこわばりに表れる。ハチに対して心を開きたい気持ちがありながら、すぐには相手を信じきれない。誰かに触れてほしいのに、近づかれると身を固くしてしまう。そうした相反する感情を、見上は目の揺れや一瞬のためらいで伝えている。

 アイは誰かを求めているのに近づききれず、救われたい気持ちがありながら、差し伸べられた手を信じきれない。そんな矛盾を抱えた少女の姿が、渋谷の雑踏や夜の空気の中でヒリヒリと残る。明るさや透明感だけでは語れない、痛みと危うさをまとった見上を知ることができる作品だ。

『光る君へ』

 2024年放送のNHK大河ドラマ『光る君へ』で、見上が演じたのは藤原彰子だった。彰子は、藤原道長(柄本佑)の娘として一条天皇(塩野瑛久)のもとへ入内する人物だ。道長の期待を背負い、中宮としての役割を求められながらも、入内直後の彰子は、その立場の大きさに心が追いついていないように映る。見上は、硬い表情や言葉数の少なさによって、后として扱われる少女の戸惑いを表していた。

見上愛、『光る君へ』で最も“変貌”した人物に “強さ”を身につける彰子から目が離せない

NHK大河ドラマ『光る君へ』で見上愛演じる中宮彰子の変化が止まらない。藤原道長(柄本佑)と源倫子(黒木華)の長女として大切に育て…

 印象的なのは、まひろ/紫式部(吉高由里子)との関係を通して、彰子が少しずつ変わっていく過程だ。最初は周囲の言葉を受け止めるだけだった彰子が、まひろと向き合う中で、自分の思いを見つめ、言葉にしていく。見上はその変化を、急に強くなる芝居ではなく、相手を見る目や声の出し方の変化で見せていた。入内直後の硬さ、後宮での孤独、そして自分の言葉を持っていく成長が、静かな佇まいの中に表れている。『光る君へ』は、見上が繊細な変化を丁寧に演じる俳優であることを示した一作である。

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