『ワンダーフールズ』が描く1999年の韓国社会の閉塞感 “何者でもない”若者たちの足掻き

 Netflixシリーズ『ワンダーフールズ』が、配信リリースされた。超能力を題材とした近年のドラマといえば、韓国の『ムービング』や、日本のドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)などが話題を集めたことが記憶に新しい。本シリーズ『ワンダーフールズ』もまた、そうした作品の系譜に連なりながらも、独自の解釈とテーマ性を打ち出しながら、平凡な市民たちによって結成される超能力チームの活躍を描いていく。

 本シリーズのユニークなのは、ポップで爽快なファンタジーアクションのようでいて、1999年の終わり、韓国社会が直面していた閉塞感を表現しているところにある。ここでは、エンターテインメントとしての本シリーズの魅力と、その背景にある韓国の一時代の社会問題、それが照射する現在の状況について考えていきたい。

 物語の舞台となるのは、世紀末の空気が漂う地方都市。うだつの上がらない日々を送り、疾患をも抱えている主人公のウン・チェニ(パク・ウンビン)は、ある事件をきっかけに、自分に備わった超能力を意識する。そして、同じく能力を持つことになるロビン(イム・ソンジェ)やギョンフン(チェ・デフン)らとともに、公務員イ・ウンジョン(チャウヌ)から超能力の指導を受けることになる。そんなチェニに、ある組織の魔の手が迫り、彼らは戦いの渦へと巻き込まれる。

 暗い過去を隠し持つイ・ウンジョンを演じたチャウヌ(ASTRO)は、これまで主演作『私のIDはカンナム美人』、『女神降臨』などの作品で、完璧な美男子を体現してきた。しかし、近年の『ワンダフルワールド』で新境地に挑んだように、本シリーズにおいては謎めいているものの冷静で野暮ったい公務員役で、俳優としての領域を広げている。

 対して、ヒロインのチェニを演じるパク・ウンビンは、本シリーズの監督ユ・インシクとともに世界的な注目を浴びたドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』などで見せた個性的な役柄を表現できる演技力を、本シリーズでも十分に発揮している。時代を背景にした鬱屈とした青春を過ごしながらも、野獣的ともいえる強烈なエネルギーを発散するキャラクターは、本シリーズに強い推進力を与えている。

 この一見すると氷と炎のような組み合わせが、笑いや恋愛描写を際立たせ、魅力を分かりやすく伝えることにつながっている。とりわけ、主人公チェニの心拍数が上昇すると意図せず瞬間移動の能力を発動してしまうという趣向は、緊迫したサスペンスのなかにラブコメ的なテイストを滑り込ませている。

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