『豊臣兄弟!』はただのサクセスストーリーではない これまでにない“地獄のリアリティ”
一つは「すべては公方様の約束を果たすため」信長の命に従い、多くの人を殺めてしまった光秀の悲劇であり、それを知った義昭の悲しみの話である。そしてもう一つは、「多くの者が助かる」から調略先である宮部継潤(ドンペイ)の元に、姉・とも(宮澤エマ)の息子・万丸(藤田蒼央)を人質として預けることを頼むしかない小一郎の話だ。
そしてそれは、小一郎の侍としての成長を意味するエピソードでもある。侍になりたての頃、小一郎・藤吉郎兄弟は、何が何やら分からず闇雲に目先の「父親の敵」を見つめていた。当時と比べて、彼らは侍としての自覚を持ってそこにいる。
「なんでうちの万丸じゃなきゃいけないの」という、ともの母としての当然の疑問に対し、「わしら家族は守られる側ではなく守る側になった」からだと小一郎は答える。弥助(上川周作)もまた、「わしは侍になってこれまで、何をしたということもない。じゃがそんなわしらの子が、多くの者の命を救えるのかもしれん。わしらの万丸が大きな役目を果たすのじゃ」と、ともを説得する。
でも、息子を手放す決断を迫られる母親・ともの受け入れがたい悲しみの表情は、そんな男たちが提示した理屈を越えて、大勢の命と、一人の子どもの命運を天秤にかけることの残酷さを視聴者に伝えるのである。また、弥助が「侍」全体の中で自身の存在意義を見出そうとする中で、子を差し出すことを受け入れる切なさもまた、乱世ゆえの「地獄」と言える。
そして、史実を知る限り私たちは、この家族会議が、兄弟の出世に巻き込まれる形で運命を動かされていく家族たちの悲劇の予兆に過ぎないことを知っている。その果てにはきっと、侍になるしかなかった豊臣兄弟の功罪もまた、描かれるに違いない。
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石 聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK