『豊臣兄弟!』小栗旬×池松壮亮の圧巻の演技合戦 2人の“化け物”が金ヶ崎の戦いで覚醒へ

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第14回「絶体絶命!」で描かれるのは、謀反を起こした長政(中島歩)ら率いる朝倉・浅井の連合軍と、織田軍が激突する金ヶ崎の戦い。

 長政という信頼していた“弟”に再び裏切られた信長(小栗旬)の怒りと義昭(尾上右近)に向ける鋭い眼光、そして家康(松下洸平)から「得体の知れぬもの」と恐れられる藤吉郎(池松壮亮)の“狂気性”が垣間見える、とりわけ演技合戦の回となった。

 長政の謀反を受け入れられずにいる信長だったが、市(宮﨑あおい)から届いた陣中見舞いの小豆を、半兵衛(菅田将暉)が「前と後ろを塞がれた“袋のネズミ”を意味しているのではないか」と進言する。小一郎(仲野太賀)も、小豆を包んでいた紙を“白紙の文”、つまりは「何も書くことができぬ、お市様の苦しみそのもの」と読み解く。

 市の命懸けの思い、そして謀反の証を前にして、信長に去来するのは長政と信勝(中沢元紀)、2人の弟の姿だった。「兄上」と慕っていたはずの弟から2度も裏切られたことが理解できない信長は、「なぜじゃ」と連呼しながら、「長政!」と怒りをぶちまける。

 怒りに支配された信長は、朝倉・浅井を滅ぼすため小谷城の総攻めを命令。口出しする家康の胸ぐらを掴み、鎮めようとする光秀(要潤)を勢いよく蹴り飛ばす。さらに信長は刀を抜き、一触即発の事態に。その空気を一変させたのは、藤吉郎だった。

 「殿!」と絶叫したあと、藤吉郎は抜刀。覚悟を決め、なんと自身の右足に刀を突き刺すのだ。「この猿、うっかり傷を負ってしまいました! これでは足手まといじゃ。素早く動くことは出来ませぬゆえ、わしがここに残りまする」と足から刀を引き抜き、土下座。戦においていかに勝つかの次に大事なのが「いかに負けるか」であり、すでに負けが見えているこの戦では撤退するのが賢明な判断だと伝え、ニカッと満面の笑みを見せる。

 気を失うような痛みから小刻みに震える身体と声。藤吉郎をそうまでさせるのは、信長への忠義の思いだ。その全身全霊をかけた藤吉郎の行動に、信長はすっかり怒りを忘れ、涙が頬を伝う。

 芝居とは「受け」と「仕掛け」で成り立っているとよく例えられるが、このシーンの場合は信長と藤吉郎のどちらもが受けでもあり仕掛けでもあった。特に、失望からの憤怒、そして落涙といった心情の浮き沈みを見せた小栗旬の演技は圧巻だ。

 藤吉郎や小一郎たち“しんがり”が、長政らを相手に二刻(約4時間)を稼いだことで、信長は京の二条御所に命からがら逃げ戻ることができた。浅井の謀反を知り「信長は戻らぬやもしれぬ」と微かな期待を寄せていた義昭だったが、目の前に現れた信長に動揺を隠すことができない。

 すぐさまその場にひれ伏す信長は、「態勢を整え次第すぐに討って出ますれば、どうかご安心くだされ」と口にし、顔を上げる。泥や土で汚れ、血走った目で見据える信長の顔は、まるで鬼のような形相。それは浅井への報復の誓いではあるが、朝倉と浅井に向けた文を送ろうとする義昭への牽制のようにも思える。

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