『タツキ先生は甘すぎる!』は子どもたちに本気で寄り添う ドラマを彩る町田啓太の安心感

 柔らかい春の日差しのようなドラマが始まった。『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)は、町田啓太演じる浮田タツキが教室長を務める、学校に行けない子どもたちの居場所・フリースクール「ユカナイ」を舞台にしたヒューマンドラマ。視聴者を引き込めるかどうかの重要な初回だが、名言らしい“名言”は出てこず、取り立てて劇的なことも起こらない。だけど、そこに、この社会のどこかで痛みを抱え、うずくまっている子どもたちに本気で寄り添おうとする姿勢が見えた。

 物語は、ユカナイに元中学教師の青峰しずく(松本穂香)が面接にやってくるところから始まる。気合を入れて臨んだら、タツキから繰り出される「テレビゲームは得意?」「将棋、ボードゲーム、カードゲームは?」といった想定外の質問に面を食らうしずく。いざ採用になって働き出しても、想像していたフリースクールとは大きく異なる光景に驚くばかり。子どもたちは宿題もせず、ゲームをしたり、絵を描いたり、ソファーで寝たり、各々自由に過ごしている。特別なルールもない、子どもからしてみれば楽園のような場所だ。

 文科省の調査によると、不登校の小中学生は2024年度に35万人を超え、過去最多となった(※)。クラスに1〜2人は学校に行けない生徒がいるといわれている。ちなみに筆者も不登校の経験者だ。そのため、フリースクールの重要性は年々増しているが、意外にもフリースクールを舞台にした作品は少ない。それも民放ドラマで……となれば、数はかなり限られてくる。このドラマで初めて存在を知る人もいるのではないか。

 日本では、フリースクールについての明確な定義はなく形態はさまざま。ただ本作に関しては、フリースクールを「子どもたちを学校に行けるようにするための場所」として描いてはいない。印象的だったのは、学校に行けない娘・綾香(藤本唯千夏)を連れて相談にやってきた母の真白(瀬戸朝香)から、「こちらにどれくらい通ったら不登校って治るんですか?」と聞かれたタツキが「治るとかはないですね」と即答する場面。不登校を「病気」ではなく、一つの「生き方」として捉える。それがタツキのスタンスであり、このドラマのスタンスだ。

 フリースクール監修を務める石井しこうが、自身のX(旧Twitter)に「不登校支援において、名教師のアツい指導や、魔法のような言葉は存在しません。本当に必要なのは、その子の心の背景をじっくり読み解き、理解すること。それ以外のことは、ひたすら『甘々』だと思われる対応でも大丈夫なんです」と投稿していた。そのあり方をまさに体現しているのが、タツキだ。第1話で感じたのは、彼はヒーローでも、救世主でもなく、迷える一人の大人だということ。思い通りにならないと、すぐ癇癪を起こしてしまう勇気(永瀬矢紘)への対応についても、代表の英治(江口洋介)に「あれでよかったのか」と話していたように、常に自問自答している。

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