『風、薫る』三浦貴大が体現する新婚夫の“クズっぷり” 見上愛は幼子の前で初めて涙する
『風、薫る』(NHK総合)第7話では、新婚のりん(見上愛)の苦労が描かれた。
りんが嫁いだのは商家の奥田家。夫の亀吉(三浦貴大)は運送業で財を成し、りんより18歳年上で今回が再婚。士族の一ノ瀬家と奥田家の家風の違いは、祝言の席での言動に表れていた。魚を食い散らかす亀吉は、礼儀作法に不足するところがある。では、性格はというと……。
女性の一代記を描いてきた朝ドラで、嫁ぎ先の家で苦労する主人公の悲哀は、定番のモチーフである。『風、薫る』でりんの義母となる貞(根岸季衣)は「士族の娘は気位が高い」と心理的な壁を築く。味噌汁を味見して無言で去るシーンは“嫁いびり”の典型に見えるが、さらにエスカレートしないか懸念される。
亀吉の仕事ぶりを見る限り、空模様を眺めて的確に作業の指示を出すなど、有能さは伝わってきた。一方で、男尊女卑の考えが垣間見える描写もあった。仕事を手伝おうとするりんに「おめえは奥にいろ」と言い、仕事はしなくていいと考える亀吉は、りんに配慮しているのかもしれないが、少なくとも女性を男性と対等とは考えていないのだろう。
亀吉には成り上がりのコンプレックスがあって、自身を「飛脚上がり」と卑下する。「学がない」ことを気にかけているようだ。学歴がなく、家柄が低いことで苦労したのかもしれない。りんへの絡み方を見ると、劣等感は相当なものと推察される。
亀吉を演じる三浦貴大は、インタビューで「ご覧になった方には亀吉をぜひ嫌いになってほしいな、という気持ちで演じています(笑)」と語っている。三浦は「亀吉の古い考え方も価値観も、彼女が新しいものに向かっていくための前提。『この時代、男と女はこういうものだったんだよ』という象徴としての役割を演じ切りたい」と続ける。
三浦自身、二世俳優として苦労したと思われるだけに、生まれと血の相克を表現することにおいて解像度の高い芝居を見せてきた。映画『国宝』の竹野のように、単に主人公の前に立ちはだかるのではなく、その時代、その環境で、人々がどのように生きなければならなかったかを、具体的な人物像として立ち上げてきた。
もし三浦の演技を観て、いかにもそれらしい前時代的なキャラクターだと感じたとしたら、それは彼が丹念に役を練り上げ、作品の一部として融合させた証拠といえるだろう。
周囲を悩ます亀吉の飲酒癖について、祝言の席で酔い潰れる、毎月、酒を桶単位で買い込む、何かあると「酒を持ってこい」と言うなど、1話の中で、これでもかとエピソードが盛り込まれていた。アルコール依存症で酒乱の傾向がある夫を、りんがどうにかできるとは思えない。それでもあえてストレートにいさめるりん。娘が産まれたものの、夫婦関係に暗雲が漂う。
信右衛門(北村一輝)が死去したときにも涙を見せなかったりんが、幼子に見せた涙は、これまで積み重なったものがあふれ出したように感じた。直美(上坂樹里)のほうは、新しい勤め先でも冷遇され、工場長に「酔いどれジジイ」と毒づく。
お笑いコンビ「ザ・たっち」の2人が柴田屋(たくや)と松永屋(かずや)として劇中で持ちネタを披露した第7話。主人公2人そろって酒飲みに苦労させられることになった。そんな中でも、英語の勉強に励む直美。週タイトルは「灯の道」で、学ぶことが光になると知らせるようだった。
参照
※ https://www.steranet.jp/articles/113161
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK