『国宝』が第49回日本アカデミー賞を席巻 会場の空気を変えた佐藤二朗のスピーチも
第49回日本アカデミー賞授賞式が、3月13日にグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールで開催された。
映画『国宝』が最優秀作品賞をはじめ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞など、最優秀賞を10冠獲得。式の中で最優秀主演女優賞に選ばれた『TOKYOタクシー』の倍賞千恵子が、映画『幸福の黄色いハンカチ』が第1回日本アカデミー賞で主要部門を総なめにした1978年の開催を懐かしむ場面もあったが、第49回日本アカデミー賞、ひいては2025年は『国宝』の年だったと言わざるを得ない。
『国宝』一色となった夜と、吉沢亮が見た“本当の喜び”
半年以上のロングラン上映の末に、実写の日本映画として歴代1位の興行収入200億円を記録した『国宝』。最優秀監督賞を受賞した李相日監督はスピーチで、本作を俳優陣・スタッフ陣による“総力戦”だと表現していた。最優秀脚本賞や最優秀音楽賞の受賞も含め、より良い作品を作ろうとする衝動や熱意が『国宝』のスクリーンにはほとばしっており、その“美しさ”が観る者の心を突き動かしていたのだと改めて実感させられる。
筆者も『国宝』の美しさに涙し、心を動かされた一人だ。特に『曽根崎心中』、そして『鷺娘』での喜久雄を演じる吉沢亮の名演が忘れられない。だからこそ、最優秀主演男優賞に選ばれた吉沢の「今こうして素晴らしい景色をこの作品にたくさん見させていただいております」というスピーチには、喜久雄が舞台から見るラストシーンを思い出さずにはいられなかった。
『国宝』という作品を通じて、芸の道を生きる人間の業、その道の険しさを実感したという吉沢の「その先にある本当の喜びのようなものに少し触れられたような気がして、改めてこの道に生きる自分を見つめ直す機会になりました」という言葉。そこに喜久雄の姿を重ねながら、これから吉沢亮が追い求めていく俳優としての景色にも大いに期待したくなった。
会場の空気を変えた、佐藤二朗のユーモアと熱いスピーチ
授賞式を取材していて印象的だったのは、俳優陣やスタッフ陣の間に徐々に一体感が生まれていったことだ。それは『国宝』のチームに限らず、その場にいるすべての映画人に対して言えることだった。
そのきっかけを作ったのが、『爆弾』で最優秀助演男優賞に輝いた佐藤二朗である。そこまで『国宝』が次々と最優秀賞を受賞していき、“『国宝』一色”となっていた中で、その空気を変えたのが佐藤だった。「これまで日本映画をあまり観てこなかった」と明かした佐藤は、昨年の日本アカデミー賞での役所広司のスピーチをきっかけに、この1年間、毎日のように日本映画を観てきたという。
「なんて戦う価値のある場所なんだろうと心から思いました。だから、僕、今ここに立ててですね、今夜はとてもいい夜です!」という素直なスピーチに、式全体に連帯感が生まれていったのは確かだ。
映画が持つ「悪い方に行く流れを踏みとどまらせる力」
プレゼンターとして登壇した脚本家の野木亜紀子や李相日監督など、多くの登壇者が現在の世界情勢を暗に伝えていたことも忘れられない。「人は美しいものを観たいと心の底から思っているんだなと。映画で世界を変えられるとまでは言い切れませんけど、悪い方に行く流れを踏みとどまらせる力が映画にはあるんじゃないかと思っています」と語る李監督の『国宝』は、海外でも高い評価を得ている。
『国宝』だけでなく、『爆弾』『ファーストキス 1ST KISS』『TOKYOタクシー』、そして最優秀アニメーション作品賞に選ばれた『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』まで。日本映画がここからさらなる盛り上がりを見せていくのだと、そう確信させる熱量が第49回日本アカデミー賞授賞式の会場には渦巻いていた。
【写真】吉沢亮、横浜流星、松たか子ら豪華出演者たちのレッドカーペットの様子
©日本アカデミー賞協会