目黒蓮の“声”にはなぜ説得力があるのか 『ほどなく、お別れです』が映し出す“真価”

 その表現は、近作『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)でも印象的に示されていた。目黒が演じた中条耕一は、経営者で馬主・山王耕造(佐藤浩市)の隠し子という立場にありながら、自分の足で着実に歩んできた人物だ。援助を申し出る耕造やマネージャーの栗栖栄治(妻夫木聡)に対して、冷ややかな態度をとり続ける。しかし、彼らにはひとつだけ通じ合うものがあった。競馬への想いだ。

目黒蓮には“大きな夢”を託したくなる 『ザ・ロイヤルファミリー』で示す俳優としての真価

現在、放送中の『ザ・ロイヤルファミリー』で目黒蓮が演じているのが、若くして馬主となった青年・中条耕一。目黒が映像作品において背負…

 耕造の愛馬、ロイヤルホープの引退試合。耕一は、競馬への強い想いとロイヤルホープへの信頼を目に宿らせる。台詞としてその想いを雄弁に語らなくとも、試合の行方を一瞬も逸らさずに見つめるその眼差しから、視聴者は耕一の熱を十分に感じとることができる。だからこそ、その後の「ロイヤルホープの子どもであれば引き継ぎたい」と想いを口にした場面では、思わず胸が熱くなる。

 こうした芝居が強く印象に残るのは、ふとした視線や表情の揺れを通して、その内側に確かに存在する熱が伝わってくるからだ。観る側はすでにその気配を感じ取っているからこそ、感情が表に現れたとき、その一瞬が強い余韻を残す。この“静”と“熱”が重なり合う二層構造こそが、目黒の演じる人物に、単なる「クールな人」では片付けられない圧倒的な人間味を宿らせている。

 そして、この内側に熱を灯らせる芝居を支えているのが、目黒の“声”だ。そもそも、彼が俳優として大きな注目を集めたのは、ドラマ『silent』(フジテレビ系)での演技だった。難病によって音のない世界に生きる青年を演じた目黒は、声を使わず、表情や視線、そして手話と涙だけで感情を表現した。高校時代に想い合っていた青羽紬(川口春奈)と再会し、抑えきれない感情を爆発させる場面では、多くの視聴者の涙を誘った。言葉にできない想いが行き場を失い、身体から溢れ出す。そんな芝居が、目黒蓮という俳優の存在を強く印象づけた。

 一方、本作では、感情を伝える手段として、声そのものを丁寧に扱う。目黒の低く落ち着いた声と余白を残す間の取り方は、セリフ一つひとつに意味が込められたこの作品と、驚くほど相性がいい。冒頭で示した「ほどなく、お別れです」という言葉も、感情を煽ることなく、しかし冷たくもならず、別れに静かな区切りを与えていく。その響きには、声を張らずとも想いを届けてきた俳優・目黒蓮ならではの説得力がある。

 静かな佇まいの中に熱を滲ませ、沈黙と声、その両方を自在に使い分ける。『ほどなく、お別れです』は、目黒がこれまで積み重ねてきた表現が、最もふさわしい形で結実した一本といえるだろう。感情を叫ばず、しかし確かに前へ進ませる。漆原という人物を通して示されたのは、今の目黒蓮が到達している俳優としての現在地そのものなのだ。

■公開情報
『ほどなく、お別れです』
全国公開中
出演:浜辺美波、目黒蓮、森田望智、光石研、志田未来、渡邊圭祐、野波麻帆、原田泰造、西垣匠、久保史緒里、古川琴音、北村匠海、鈴木浩介、永作博美、新木優子、夏木マリ
原作:長月天音『ほどなく、お別れです』シリーズ(小学館文庫)
監督:三木孝浩
脚本監修:岡田惠和
脚本:本田隆朗
音楽:亀田誠治
配給:東宝
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