『ばけばけ』日本滞在記の完成と“特別な日常” 記者・梶谷の取材は吉と出るか凶と出るか

 ヘブン(トミー・バストウ)が庭先で聞こえてきた鳥の鳴き声に興味を持つ。鳴き声の正体は山鳩。トキ(髙石あかり)はヘブンに「テテポッポ、カカポッポと鳴いちょると、松江の人は皆言います」と教え、2人は鳩の真似をしながら家の前を楽しそうに歩く。その様子を近所に住む婦人が微笑ましそうに眺めていた。

 『ばけばけ』(NHK総合)第76話では、トキたちのたわいもない日常が、ますます松江の人々の注目の的になっていく姿が描かれていた。

 ヘブンの大きな独り言で目が覚めたトキ。尋常ならぬ雰囲気を感じ取り、急いで襖を開けるとヘブンが歓喜の舞を踊っていた。来日してから書き続けてきた日本滞在記がついに完成したのだ。最初の読者に選ばれたのは、錦織(吉沢亮)だった。

 ただの通訳ではなく、創作活動をサポートしてくれた“リテラリーアシスタント”として、錦織に意見を求めるヘブン。そのときの錦織の嬉しそうな顔といったら。ヘブンに苦労をかけられたことも、寂しい思いをさせられたこともあったけど、「あなたのおかげでできた本」と言われた瞬間にすべてが報われた気持ちになったのではないだろうか。

 ヘブンの日本滞在記はたくさんの人の支えによって完成した。夜な夜なヘブンに怪談を語り聞かせたトキはもちろん、松江の観光名所を案内した知事の江藤(佐野史郎)やリヨ(北香那)、そして遠く離れたアメリカから執筆を応援してきたイライザ(シャーロット・ ケイト・ フォックス)。ヘブンはトキとの結婚の報告も兼ね、イライザに手紙を書くことにした。一人ひとりへの感謝を忘れないヘブンも、それに対して嫉妬するのではなく、「きっとお喜びでしょう」と笑顔で返せるトキも素敵だ。

 日本滞在記が出版されるまでの間、少し時間に余裕ができるヘブンからトキは英語を教わることに。錦織が不在のときはトキがその役割を担うことで、ヘブンが今よりも日本で暮らしやすくなれば、との思いからだった。日本滞在記完成パーティーでは、ヘブンが慣れ親しんだ西洋料理を山橋(柄本時生)に振る舞ってもらう。司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)は初めての西洋料理を前に、ちょっと緊張気味。山橋西洋料理店でトキとヘブンが交わした「次はパパさんママさんも」という約束が早くも果たされたかたちだ。

 「松野家のやり方に合わせる」という言葉を鵜呑みにし、いつの間にかヘブンに無理をさせてしまっていた反省を即座に活かして自分たちも歩み寄ろうとするトキたち。平穏な暮らしは、一方的ではなく、双方の思いやりによって成り立つのだと改めて思わされる。今の松野家はなんだかいい感じだ。

 だが、記者の梶谷(岩崎う大)がパーティーに乗り込んできたことによって胸が少しざわつく。前回は“日本の宝”と大袈裟に持ち上げられたせいで酷い目にあったヘブンに「嫌なことがあったらすぐに終わりにする」と約束し、パーティーの模様を取材する梶谷。そこで行われていることはトキたちにとってみれば、ちょっと特別な日常だ。ナイフとフォークでの食事に苦戦する司之介とフミ。ステーキの感想を言おうとして意図せずダジャレになってしまったトキ。以前と何ら変わりなく、いつもの気取らない彼らの姿がそこにある。

 しかし、もしも詳細は割愛され、【松野家が豪華な西洋料理を堪能。トキ「ステーキは素敵なお味」】なんて見出しの記事が出た日にはどうなるか。今週の副題にもなっている、“川の向こう”の人たちはどう思うのか。気になるのは、サワ(円井わん)の反応だ。松野家の新居を訪れ、「別世界だった」と感じた彼女の心が、より一層トキから遠ざかってしまわないかが心配である。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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