『ダウントン・アビー』劇中アンティークを博物館館長が解説 「本物は剥がれない」
1月16日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開される『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』の公開を記念して、英国アンティーク博物館(BAM鎌倉)の土橋正臣館長が、劇中のアンティークから当時の「社会構造の変容」と本作の魅力を語った。
英国文化に精通する土橋館長は、劇中の時代背景やイギリスにおけるアンティークの捉え方について、自身の体験を交えた興味深いエピソードを明かしている。まず、劇中屋敷内にたくさんの肖像画が飾られていることに触れ、「絵画には格付けがあり、一番高い位が宗教画、次が肖像画、そして風景画、静物画と続く。肖像画は家格の高さの象徴であり、それを飾れることはとても誇らしいので、ヨーロッパでは今でも古い肖像画が高値で取引され、それが家の目立つところに飾られています。日本人の感覚からしたら、よその家のおじいさんの肖像画を飾るというのはおかしな感覚ですが、英国では中産階級が台頭した時代、肖像画を買って家に飾ることが流行しました。実際に私の友人の家でも、貴族の出ではないのに玄関に立派な肖像画が飾ってあり、『これ誰?』と聞くと、『知らない。でもカッコいいだろ?』と笑って答える(笑)」と語った。
こうした ステータス・シンボルとして「歴史を金で買う」中産階級の台頭に対し、本物の先祖と歴史を守り抜こうとするクローリー家の姿は対照的だ。今作でも、一族の精神的支柱であった先代伯爵夫人バイオレットの肖像画が飾られているが、それは単なる装飾でも贅沢でもない。時代の荒波の中で、金では買えない“真の伝統”を次世代へ繋ごうとする、貴族としての切実なプライドの証明ともいえる。
作品に説得力をもたせるため、また当時のリアルを表現するため、本作では徹底した“本物志向”が貫かれている。撮影の舞台となるハイクレア城に代々伝わる歴代のアンティークや、希少なピリオド品(時代を超えて引き継がれてきた本物)が使用されており、それらには年月を経て得られた特別な美しさ“パティナ(古艶)”が宿っているという。劇中には、イパーンという、ダイニングテーブルに置く花を飾るためのセンターピースや、ヴィクトリア時代から引き継がれた美しい装飾のシルバーティーセット、高価な紅茶をお庭で愉しむためのティーケトル(アルコールバーナー付やかん)など、土橋館長が「博物館にあってもおかしくない」と唸るほどのお宝アンティークが惜しげもなく登場している。
「メッキはいつか剥がれるが、本物は剥がれない」と語る館長。価値あるもの(=屋敷や食器、家具、そして貴族の家系など)を維持していく“努力の過程”こそが本作の真髄だと説く。最後に、「アンティークを愛し、大切にするようになれば、隣の国にも歴史ある貴重なのがあると気づき、爆弾を落とせなくなる」と語った。
■公開情報
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』
1月16日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
出演:ヒュー・ボネヴィル、ローラ・カーマイケル、ジム・カーター、ラケル・キャシディ、ポール・コプリー、ブレンダン・コイル、ミシェル・ドッカリー、ケヴィン・ドイル、マイケル・フォックス、ジョアンヌ・フロガット、ポール・ジアマッティ、ハリー・ハッデン=パトン、ロブ・ジェームズ=コリアー、アレン・リーチ、フィリス・ローガン、エリザベス・マクガヴァン、ソフィー・マクシェラ、レスリー・ニコル、ダグラス・リース、ペネロープ・ウィルトン、アーティ・フラウスハン、アレッサンドロ・ニヴォラ、ジョエリー・リチャードソン、サイモン・ラッセル・ビール、ドミニク・ウェスト
監督:サイモン・カーティス
脚本:ジュリアン・フェローズ
プロデューサー:ギャレス・ニーム、リズ・トルブリッジ
プロダクションデザイン:ドナル・ウッズ
衣装デザイン:アンナ・メアリー・スコット・ロビンス
メイク・ヘアデザイン:アン・ノシュ・オールダム
配給:ギャガ
原題:Downton Abbey:The Grand Finale/2025/イギリス/124分/カラー/シネスコ/字幕翻訳:牧野琴子/G
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公式サイト: https://gaga.ne.jp/downton_abbey_the_grand_finale/