『ばけばけ』“神回”に相応しい「だらくそが!」の絶叫 池脇千鶴&北川景子の“母”の愛に涙

 「だらくそが!」と空に向かって叫ぶ、松野家と雨清水家、そこに同席した錦織(吉沢亮)。トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)の結婚披露パーティーには似つかわしくない悪口の言葉だが、両家の抱え込んでいた嘘というしがらみから解き放たれるような、そんな清々しく、感動的な回であった。

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第14週「カゾク、ナル、イイデスカ?」第70話。ヘブンは松野家が借金を抱えながらも、司之介(岡部たかし)が「支える」と、勘右衛門(小日向文世)が「大船に乗ったつもりで」と言ったことを、雨清水家は三之丞(板垣李光人)が社長ではないことを、そしてトキは女中として働き、そのお金を渡すことで両家を支えていること、その全てを語った。止めに入る錦織、思わず「なして」とつぶやくトキの心境からするとぶちまけた、暴かれたという表現の方がぴったりくるかもしれない。

 建て前。それは、本当の気持ちを隠すことで、相手と良い関係を築こうとする日本の文化。『ばけばけ』の明治時代ほど家の格を重んじることはないが、令和の現代でも当たり前のように使われる日本特有の習わしで、ビジネスにおける「検討いたします」という一旦の返事などがそれに当てはまるだろう。

 トキがヘブンに給金で両家を支えていることを黙っていたのは、お金のために一緒になったと思われたくなかったから。言ってみれば、トキが松野家にヘブンとのことを黙っていたのも、女中としてではなく、ふしだらな関係にあったと思われたくなかったことからの建て前。だからこそのトキの「言います!」なのだ。

 英語でも「Honne and tatemae」と表現されることがあるほど、現代においても海外では建て前という考え方は通用せず、明治に生きるヘブンにとっては嘘でしかない。しかし、その新たな視点、考え方が、両家を薄らと隔てていた壁を壊し、溜まっていた膿を浄化していく。

 松野家と雨清水家にとっての最大の建て前である、トキの母親がタエ(北川景子)だということをヘブンに伝えるフミ(池脇千鶴)。早くに母親と生き別れたヘブンにとっての義理の母=ママさんが2人できることに笑みを浮かべながら、「オフミママサン」「オタエママサン」とヘブンは頭を下げるが、その後ろでトキはうらめしく思っていた。

 トキがタエのことを「叔母様」と呼んでいたのも、両家の関係性を守るための建て前だった。トキはくしゃくしゃの顔でタエを見つめ、ずっと言いたかった「母上」とは言えず、フミに促される形で、「ママさん」と呼ぶ。それを受け止め、涙で歪む泣き笑いのタエ=北川景子が『ばけばけ』で見せる“初めての母親”としての表情が印象的だ。池脇千鶴と北川が涙を拭う姿からは、感情が抑えきれなくなったのかとも思える、視聴者の涙を誘うポイントだ。

 安堵してか気が抜けて、床に倒れた三之丞。司之介の誘いで「だらくそが!」と叫ぶラストシーンは、一貫して変わらぬ『ばけばけ』のおかしみを体現しながらも、ヘブンを含めた松野家と雨清水家がようやく家族として一つになれたことを表している。ドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)でも家族を演じていた岡部たかしと板垣李光人がわちゃわちゃとじゃれあっている姿は、微笑ましかった。

 第15週「マツノケ、ヤリカタ。」からは、トキとヘブンの新婚生活が始まるわけだが、女中としての給金がどうなるかはいまだ分からず。予告では「4人での暮らしが始まる」というトキのセリフもあり、さらには公開されている1分新スポットでは懐かしい面々の再登場がありつつ、トキがラシャメンとして街の人々から揶揄される姿も。ここからさらなる『ばけばけ』となっていく予感がする。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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