2025年の年間ベスト企画
リアルサウンド映画部編集部4人が選ぶ、「2025年 年間ベスト映画TOP10」
リアルサウンド映画部の年末恒例企画、年間ベスト(映画・国内ドラマ・海外ドラマ・アニメ)が出揃った。全18人の選者の個性が光る中、編集部でもベスト映画を選出。2025年に公開・配信された作品の中から、リアルサウンド映画部の編集部4人がそれぞれのトップ10作品を選んだ。
宮川翔(編集長)
1. 『ANORA アノーラ』
2. 『F1/エフワン』
3. 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
4. 『聖なるイチジクの種』
5. 『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
6. 『リアル・ペイン 心の旅』
7. 『平場の月』
8. 『ファイナル・デッドブラッド』
9. 『秒速5センチメートル』
10. 『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』
2015年にローンチしたリアルサウンド映画部は2025年に10周年を迎えた。この10年の間に映画を取り巻く状況は大きく変わってしまったが、それを抜きにしても2025年は映画不作の1年だったと感じる。
日本国内では『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『国宝』の記録的なヒットがあり、海外でも『ズートピア2』や『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』などファランチャイズものを中心に大ヒット作品が生まれているが、丸の内TOEIや新宿シネマカリテの閉館(2026年1月12日閉館)、ワーナー・ブラザース ジャパンの配給業務終了、本国ワーナー・ブラザースの買収騒動など、暗いニュースが目立つ1年でもあった。そんな中で心から興奮した作品は、1位の『ANORA アノーラ』、2位の『F1/エフワン』、3位の 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の3作品くらいだった。
個人的に愛してやまない映画作家の新作や本国での興行的な盛り上がりから大いに期待していた作品群ーーライアン・クーグラーの『罪人たち』、ジェームズ・ガンの『スーパーマン』、ポール・トーマス・アンダーソンの『ワン・バトル・アフター・アナザー』、ザック・クレッガーの『WEAPONS/ウェポンズ』(全てワーナー作品!)ーーもそれぞれ楽しめたものの、トップ10に入れるほどではなく、正直期待外れだったと言ってもいい。
映画を観ることの意味や映画との向き合い方を改めて考える機会も多かった2025年。2026年は映画を好きで良かったと思える1年になることに期待したい。
石井達也(副編集長)
1. 『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
2. 『見はらし世代』
3. 『星と月は天の穴』
4. 『雪子 a,k.a.』
5. 『ひゃくえむ』
6. 『トリツカレ男』
7. 『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』
8. 『ファーストキス 1ST KISS』
9. 『片思い世界』
10. 『国宝』
毎年毎年、「あれも観ていない、これも観ていない」と思う年末恒例のベストテン。すべてを観た上での比較ができない以上、極々個人的な体験に基づいて選ぶしかないということで、今年は邦画10本に絞ってみました。
選んだ基準は、過去から現在(あるいは未来にかけて)自分の実人生の中でどれほどリンクするシーンがあったかどうか。
絶対に思い出したくない恋のヒリヒリした感情を呼び起こしながらも、そこに救いももたらしてくれた『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』。河合優実×伊東蒼という、現在の演技モンスター2人が姉妹を演じた作品としてもずっと記憶され続けるでしょう。
姉と弟との関係性と変わりゆく渋谷を同じように体験した②、自分も“捨てられた”先にはこう生きてみたいと思ってしまった③、ラップ=言葉で思いを伝える難しさと切なさとカッコよさにリスペクトしかない④、追い求め続けた先にしかないものを思い出させてくれた⑤と、いずれの作品にも“あのとき”の自分を重ねてしまう瞬間が多々ありました。
佐野晶哉という才人に驚愕の⑥、KANONさん俳優業も頑張れの⑦、映画の坂元裕二をこれからもまだまだ観たい⑧⑨、『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(横浜流星)、『ばけばけ』(吉沢亮)、『ひらやすみ』(森七菜)とNHKドラマ3本とあわせてもやっぱり記録として残しておきたい⑩。もし歌手なら、脚本家なら、役者なら、「こうなりたい」と思う才たちにリスペクトを寄せて。
『べらぼう』が1年間かけて描いてくれたように、やっぱり生きる上でエンタメは欠かせないものであることを実感した2025年でした。