朝ドラ『ばけばけ』は北香那の代表作へ 出演作3選から紐解く“愛さずにいられない”人物像
ここ数年のドラマ出演作を追っていくと、そのたびにキャスト表の中から、北香那という名前が確かな存在感を放っていることに気づく。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』で演じる江藤リヨは、物語の恋模様をかき回すお嬢様でありながら、視聴者の心に長く残るキャラクターとして存在感を放っている。高飛車で奔放、しかしどこか不器用で、時代の変化に戸惑う若い女性だ。
脇役から物語の鍵を握るポジション、さらにはヒロインまで。ジャンルも制作サイドも異なる現場で、北は一作ごとに“どこか愛さずにはいられない”人物像を更新してきた。その蓄積が結晶したのが、『ばけばけ』のリヨというキャラクターだと言っていいだろう。本稿では、その歩みの一端をいくつかの出演作からたどってみたい。
『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』
北の名前を最初に印象づけたのは、『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』(テレビ東京系/以下、バイプレイヤーズ)のジャスミンだろう。ベテラン俳優たちが本人役で集う異色作の中で、彼女が演じたのは、軽妙な中国人のアシスタントプロデューサー。コワモテの名優たちの間を、屈託のない笑顔とカタコトの日本語で縫うように動き回る存在だった。
この役の面白さは、単に“かわいいマスコット”に収まらないところにある。場の空気が重くなりかけるとき、ジャスミンの一言がそれをふっと軽くする。逆に、俳優たちの本音や不安が滲む場面では、彼女の素朴なリアクションが、その感情をより立体的に見せていく。北はここで、大げさなボケやツッコミに頼らず、表情の温度や間によって笑いを生む術を身につけている。
本人役の俳優たちとフィクションのキャラクターとして向き合いながら、作品世界を壊さずに存在感を示す。その経験は、『ばけばけ』でのリヨに直結している。朝ドラという大きな器の中で、ヒロインや家族、松江の人々と関わりながら、物語のムードを少しだけ変える人物としてそこに立ち続ける。そのさじ加減は、『バイプレイヤーズ』で磨かれたバランス感覚があってこそだ。