山田涼介、『世にも奇妙な物語』で新境地に挑む 華やかさと弱さ“2つの顔”がぶつかり合う

 華やかなスター役を演じたすぐあと、山田は今度、どん底の男に挑む。『止まらなければ生きられないゲーム』で彼が演じる徳永正夫は、友人の会社の連帯保証人になったことで人生が一変し、仕事も家庭も失ってしまう。絶望の中で、30億円の賞金をかけた“だるまさんが転んだ”のような命懸けのゲームに挑むことになる。止まったら死ぬという極限の中で、生きたいという思いと人間の弱さがあらわになっていく。半年のあいだに「スターの頂点」と「人生の底」を行き来した山田の演技は、俳優としての幅の広さをはっきりと示している。

 山田の表情には、追い詰められた人間の苦しさを静かに伝える力がある。整った顔立ちの中にわずかな乱れが生まれると、その瞬間に感情があふれ出し、観る者の心をつかむ。『ダメマネ!』で見せた完璧な笑顔が“見られること”への意識を象徴していたなら、今回は“生きるためにもがく”人間の必死さがその笑顔を崩していく。美しさと壊れゆく姿が同時に見えるからこそ、山田涼介の演技は強く印象に残る。

 借金や挫折、賞金をかけた命懸けのゲームという設定は、Netflixシリーズ『イカゲーム』を思い出す人も多いだろう。だが本作が面白いのは、その“似ている部分”をうまく使いながら、まったく別の方向へ導こうとしている点だ。『イカゲーム』が社会の不平等を描いた群像劇だったのに対し、『世にも奇妙な物語』では、ひとりの人間の心の揺れや選択に焦点を当てている。派手なアクションよりも、“止まる”その一瞬に生まれる恐怖や後悔といった、静かな緊張感が物語の中心になる。さらに、「だるまさんが転んだ」を題材にしているのも特徴的だ。子どもの遊びが命を懸けた戦いに変わることで、誰にでもある日常が一瞬で壊れる怖さが際立つ。現実的な社会問題ではなく、日本の文化や感覚に根ざした“身近な恐怖”を描いている点に、この作品ならではの魅力がある。

 『世にも奇妙な物語』が35周年を迎える今回の作品で掲げた“日韓共同制作”という取り組みは、ただの話題作りでは終わらない。韓国の映像技術と、日本が得意とする繊細な心理描写。その両方を掛け合わせることで、これまでにない短編ドラマの形を生み出そうとしているのだ。

 そして、その中心に立つのが山田涼介だ。スターとしての華やかさと、普通の人間としての弱さ。その両方を同じ熱量で表現できる俳優は多くない。『止まらなければ生きられないゲーム』は、そんな山田の“2つの顔”がぶつかり合う作品になるだろう。35年経っても進化を止めない『世にも奇妙な物語』。その新しい挑戦の中心に立つ山田涼介が、どんな“奇妙”を見せてくれるのか。この秋、放送が待ち遠しい。

■放送情報
土曜プレミアム『世にも奇妙な物語35周年SP 秋の特別編』
フジテレビ系にて、11月8日(土)21:00~23:10放送
出演:タモリ(ストーリーテラー)
プロデュース:狩野雄太(フジテレビ)、江花松樹(フジテレビ)、中村亮太、歌谷康祐
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kimyo/

『あなた博物館』
出演:川口春奈、笠松将 、螢雪次朗
脚本:原野吉弘
演出:植田泰史

『七階闘争』
出演:伊藤淳史、与田祐希、西田幸治(笑い飯)
原作:三崎亜記『七階闘争』(集英社文庫『廃墟建築士』所収)
脚本:相馬光
演出:アベラヒデノブ(BABEL LABEL)

『止まらなければ生きられないゲーム』
出演:山田涼介、柳ゆり菜、渡辺大知
脚本:JU JIN
演出:土方政人
企画協力:WEMAD LEE HYUN WOOK、ANTHONY KIM
協力プロデュース:LEE JUNYONG KIM YU RIM、山本高志

『ハッピーバースデー・ツー・マイホーム』
出演:役所広司、岩崎良美、河原崎建三
脚本:君塚良一
演出:落合正幸

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