宇野維正の映画興行分析

全国拡大公開も決定 『もののけ姫』リバイバルが象徴する2025年のシネコンの風景

 10月第4週の動員ランキングは、『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』『秒速5センチメートル』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の上位3作品の順位に変動なし。10月24日に北米公開された『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』は、アジア各国に続いて北米でも初登場1位を奪取。国内興行において邦高洋低の状況が続いている近年、北米と日本で同時に1位に立つ作品は急減していたが、9月第3週の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』に続いて、日本映画でその快挙を成し遂げた今年2作目の作品となった。日本のアニメーション作品は、日本だけでなく、世界を巻き込んで映画界全体の勢力図を大きく変えてしまった。

 映画界全体の変化という点では、そのトップ3に続いて4位に『もののけ姫 4Kデジタルリマスター』が、5位に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』がランクインしているのも象徴的だ。前者の3日間の動員は10万9100人、興収は2億4500万円。後者の3日間の動員は7万9000人、興収は1億2500万円。メジャーで公開される新作日本映画のオープニング成績のアベレージを軽く超えている。いずれも1997年、つまり28年前に初公開された作品だが、当時の観客のノスタルジー消費としてだけでなく、次世代の観客も集客しているからこその数字だろう。

 トップ10のランキングには入らなかったものの、10月13日から始まった、3年前の公開作『THE FIRST SLAM DUNK』の2回目となるリバイバル上映も、IMAX先行上映を含む24日間で動員10万7100人、興収1億8300万円という数字を記録した。この興収は、例えば現在公開されている洋画でいうと、全米初登場1位となった『死霊館 最後の儀式』の10日間の興収とほぼ同じ水準だ。

 当初、全国61館のIMAXスクリーンのみでの公開が予定されていた『もののけ姫 4Kデジタルリマスター』は、連日の大入りを受けて11月7日から47都道府県、171館での拡大上映が決定。全世界初のDolby Cinema上映、英語字幕版上映などがある一方、劇場環境によっては2Kコンバートでの上映もあるとのことで、本来の趣旨からはズレてしまったような気もするが、それでもいいのだろう。シネコン運営の柱の一つとして、旧作上映はすっかり定着した。この流れはこれからも止まらないだろう。

■公開情報
『もののけ姫 4Kデジタルリマスター』
期間限定上映中
声の出演:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、西村雅彦、上條恒彦、美輪明宏、森 光子、森繁久彌
原作・脚本・監督:宮﨑駿
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:久石譲
主題歌:米良美一
制作:スタジオジブリ
配給:東宝
©1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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