北村有起哉、“理屈じゃない”出会いが導く俳優道 「これはやるしかないじゃん!」の感覚

 北村有起哉が主演を務める『小さい頃は、神様がいて』が、フジテレビ系木曜劇場枠で10月9日より放送される。本作は『最後から二番目の恋』シリーズ(フジテレビ系)などで知られる岡田惠和による完全オリジナルストーリーで、レトロな三階建てマンションを舞台に3家族の物語が描かれる。

 地上波ゴールデン・プライム帯ドラマ初主演に挑む北村は、仲間由紀恵演じる妻・あんと共に、夫婦としてのリアルな掛け合いや人と人とのつながりを体現していく。「思いもよらない素敵な出会いが今回もあった」と言う北村に、座長としての心境や仲間との共演で感じたこと、そして作品選びのポイントまでをたっぷりと語ってもらった。

“バイプレイヤー”の経験を活かした座長像

ーー地上波ゴールデン・プライム帯ドラマ初主演になります。座長としての意気込みを教えてください。

北村有起哉(以下、北村):正直、「本当に僕でいいの?」という気持ちがまずありました(笑)。あまり気負いすぎてもよくないですし、基本的には今まで通り、リラックスした状態で臨むことに変わりはありません。ただ、せっかくこうした機会をいただいたからには、新しい経験値を積みたいという思いもあります。例えば、スタッフワークの細かいところまで目を配ったり、現場の方々の名前をきちんと覚えたり。石原裕次郎さんのような座長だったらどうするだろう、と想像してみたりもします。今まで通りのスタンスでやるのは楽ですが、それだけでは座長としての責任を果たせない気もしますから。自然な形であっても、その立場に伴う責任はしっかり背負わなければ、と感じていますね。

ーー本作は現場の雰囲気もすごく大切な作品だと感じました。雰囲気作りで意識されていることは?

北村:僕自身、これまで脇役としてさまざまな現場を経験してきましたから、あまり張り切りすぎると逆に周りが疲れてしまうと思っていて。雰囲気というのは、結局のところ蓋を開けてみないとどんな化学反応が起きるか分からない部分もあると思います。ただ今回は、本当にアットホームな雰囲気で撮影できています。草刈正雄さんもいらっしゃいますし、若い子たちもいて、ちょうどみんなでトランプをしているような感覚というか。そんなふうに自然に和やかな空気が出来上がっているんじゃないかなと思います。

ーー脚本は岡田惠和さんの完全オリジナルです。台本を読んだ感想を教えてください。

北村:3つの家族の物語がしっかり描かれていて、その中で僕の家族は「離婚するかしないか」というちょっと特殊な状況にあって、その問題が他の2家族に広がっていくんです。巻き込まれていくのか、あるいは巻き込んでいくのか……。そのとき、2家族がどちらの立場に立つのか、どんな関わり方をするのか、そこがすごく面白いところです。同性愛の女の子たちや、熟年夫婦のストーリーもきちんと描かれていて、それぞれの家族が濃密につながっていく。第1話から、人と人とのつながりがこれでもかというほど温かく描かれていて、岡田さんならではの仕掛けが随所にあります。

ーーもし北村さんが、渉と同じように「19年前の約束通り離婚したい」と言われたらどうしますか?

北村:いやあ、ビックリしますよね(笑)。「今さら何を言ってるの?」と。だったらせめて定期的に予告してほしい(笑)。20年もあって、残り55日になって急に言うなんて、それは違うでしょって。冷静ではいられないですよね。とにかく話し合いに持ち込むしかない。僕自身、若い頃の恋愛でも別れの場面ではとことん話してました。フラれた時も、相手の言い分を全部聞いて、それでもだめなら、自分の荷物だけバッとまとめて、すっと身を引く。たぶんそういう向き合い方になると思います。

“この瞬間の光景は二度とやってこないんだろう”という死生観

ーー「渉は自分自身と重なる部分が多い」とコメントされていたのが印象的でした。具体的にどういった点で共通点を感じていますか?

北村:由紀恵ちゃん演じるあんとの掛け合いで「え、僕、地雷踏んでたの?」みたいな細かいやり取りがあって、「普段も絶対やってるわ」と思いました(笑)。それと、立ち直りが早いところも似ているかもしれません。昨日も注いだばかりのコーヒーを全部ひっくり返しましたが、あまりくよくよせず、ちゃんと反省はするけれどすぐ立ち直るタイプなんです。「反省期間、ちょっと短くない?」と言われそうですが(笑)。あとは小さな幸せでついニヤニヤしてしまうところも共通していると思います。

ーーちなみに、最近ニヤっとした小さな幸せは?

北村:やっぱり子どもを見ていると微笑ましくなりますし、妻と子どものやり取りを眺めながら「こういう光景を見られるのも今のうちなんだろうな」と思ったりします。大病をしたわけではないですが、今この瞬間の光景は二度とやってこないんだろうという感覚があって、死生観に近いものなのかもしれません。そういうことを考えると、つい一つひとつの出来事にしみじみしてしまうタイプなんだと思います。

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