松坂桃李×染谷将太、14年ぶりの共演で知った新たな魅力 「また必ず共演したい役者」
9月19日より全国公開される劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』。原作は『チ。―地球の運動について―』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を史上最年少で受賞した魚豊の連載デビュー作だ。陸上競技の100m走という、わずか10秒間にすべてを懸ける人間たちの栄光と挫折を描いた本作で、才能型のトガシを松坂桃李、努力型の小宮を染谷将太が演じる。
劇中ではライバルでありながら同志でもある関係性を築く2人だが、今回が14年ぶりの共演。役者同士として互いをどう見ているのかに加え、演じたからこそ気づいた「トガシと小宮の関係性」の魅力や、アフレコでの発見、キャラクターへの共感について語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「お互い父親になっていました(笑)」
ーー映画『アントキノイノチ』以来、14年ぶりの共演となりました。久しぶりにご一緒されて、お互いの印象にどんな変化を感じましたか?
松坂桃李(以下、松坂):まずはお互い父親になっていました(笑)。(染谷さんは)もともと落ち着いた印象があったんですが、月日が経って、さらに落ち着きが増したように感じました。家庭を持ったことによる変化なのかなと勝手に思っています。
染谷将太(以下、染谷):僕は勝手に「すぐまた共演できるだろう」と思っていたんですが、まさかこんなに時間が空くとは(笑)。その間も桃李くんの作品を観るたびに「また一緒にやりたい」と思っていたので、今回それが叶って本当に嬉しかったです。久々に会ったのに、不思議とブランクを感じなかった。作品を通してずっと見ていたからかもしれませんね。だから「また一緒に仕事ができる」という喜びがより強くありました。
ーー『ひゃくえむ。』のアフレコで、相手の芝居に触れて「すごい」と思った瞬間はありましたか?
松坂:小宮は表情の振り幅が大きいタイプではないけど、その中で感情の波を繊細に表現していて。染谷くんからは、表には出ていないけれど静かに燃え続ける青い炎のような熱が確かに伝わってきました。
染谷:トガシというキャラクターの中にある揺るぎない感情を表す上で、桃李くん自身の熱もすごく感じました。それに呼応して自分もふつふつと燃え上がることができたので、「トガシ役が桃李くんでよかった」と思いました。
ーー走る描写はアニメーションならではの迫力がありました。原作漫画と両方をご覧になって印象に残った表現は?
松坂:漫画で感じていた躍動感がそのままアニメになっていて、正直「これは相当大変だっただろうな」と思いました。衝撃を受けましたね。僕もアスリートの方に息遣いを教わってからアフレコに臨みました。
染谷:(走る動きをしながら)現場でもこうやって実際に走ってたよね(笑)。
松坂:うんうん、走る息遣いのアフレコでは少し酸欠になりそうになりながらやってたよね。
染谷:原作の迫力がそのまま、しかも生々しくアニメーションになっていて感動しました。音もすごかったですし、実際の選手の走りを3DCG化してから作画にして作られていると聞いて納得しました。カメラの揺れ方も実写に近くて、手持ちカメラで追っているようなリアリティがあった。さらに、原作に描かれていた印象的なセリフを声で聴くことができたことで、読んだときとはまた違った感動がありました。
「津田さんの声ってヒーリング効果があるんです」
ーー登場人物の中で、特に印象的だったキャラクターはいますか?
松坂:僕は海棠が好きでした。自分もあんなふうに歳を重ねたいなと思いました。100mに人生を懸ける姿は人によっては不思議に見えるかもしれないけれど、そのひたむきさはすごく美しく見えました。
ーー海棠役の津田健次郎さんとは収録でご一緒されたんですよね?
松坂: はい。アフレコでご一緒できて、津田さんのあの声を間近で聴けるなんて特等席をいただいた気分でした(笑)。津田さんの声ってヒーリング効果があるんです。
染谷:僕は津田さんとはご挨拶だけでしたが、財津役の内山(昂輝)さんとは収録でご一緒しました。いやぁ、本当にカッコよかった。財津がちゃんとそこにいる感じがすごく明確に伝わってきました。キャラクターの中でも一番印象に残っています。質問に答えるときに「自分は生物なので」と切り返すシーンには衝撃を受けました。不安を恐れないことと、不安を抱えていることを同時に受け入れて、そのうえで緊張すら楽しんでしまう。その姿勢に、僕自身もそうなりたいと思わされました。
ーー内山さんとはお話しされましたか?
染谷:「アフレコって1日に何本もやるんですか?」と聞いたら、「1日5本くらいはできます」と言われて(笑)。「そんなに!? 実写ではとても無理ですー」なんて話をしていました。