いつから“かわいい”中年男性俳優に? 柳葉敏郎、阿部サダヲ、遠藤憲一らが放つギャップ
今や世界共通語となった「Kawaii(かわいい)」。この国の女性は「かわいい」を多用しがちで、本来「かわいい」とは対極的な存在である中年男性に対しても使われる。特に日本の芸能界は“かわいい中年男性俳優”の宝庫だ。
今期のドラマでもたくさんのチャーミングな中年男性俳優たちが活躍しており、その筆頭が『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)に出演する柳葉敏郎である。本作は、子どもの福祉に関する多種多様な相談を受け付ける児童相談所が舞台。虐待、ネグレクト、育児ノイローゼなどセンシティブなテーマを扱っている本作だが、物語全体は優しい雰囲気に包み込まれている。
その発信源となっているのが、柳葉扮する一時保護所の課長兼保育士の“ジョーさん”こと南野だ。ファンシーなエプロンをつけ、子どもたちと笑顔でじゃれ合う姿は紛うことなきかわいさ。もともとは自身も児童福祉司であるがゆえに職員たちの良き相談役となっており、柳葉の穏やかさの中に年長者としての深みを感じさせる口調が印象的だ。入管職員に屈辱的な言葉をかけられ、口では反論しつつも笑顔を絶やさない、笑いながら怒る演技もお見事だった。
だが、代表作『踊る大捜査線』(フジテレビ系)シリーズをリアルタイムで観ていた世代にとっては柳葉が「かわいい」と言われていることに驚きを禁じ得ないのではないだろうか。柳葉が演じた室井は寡黙で常に眉間にしわを寄せており、ともすれば威圧感を与えかねない人物。しかし人情に厚く、『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』(2024年)では室井の温かみや優しさの部分が前面に押し出されていたように思う。記憶に新しいところで言えば、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』で演じたスズ子(趣里)の父・梅吉も大らかでどこか少年っぽさがあり、年齢を重ねて丸くなった今の柳葉だからこそ演じられた役だった。