『不思議の国でアリスと』ワンダーランドのコンセプトデザイン公開 新井清志のコメントも
8月29日に公開される劇場アニメ『不思議の国でアリスと -DiveinWonderland-』より、レッドハウス・新井清志が手がけたコンセプトデザイン画が公開された。
1865年にルイス・キャロルが生み出し、今もなお世界中で読み継がれている『不思議の国のアリス』を日本で初めて劇場アニメーション化した本作。原作の世界観を大切にしつつ、現代を生きる主人公のりせが、“不思議の国に迷い込む”というオリジナル設定となっている。
その不思議の国の世界観の構築を担ったのが、アートスタジオ・レッドハウス代表の新井。『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめ、数々のゲームタイトルでコンセプトアートを手がけてきた新井にとって、アニメ作品での世界観設計は今回が初の試みとなる。ゲーム的なダイナミズムと映像的な想像力を融合し、これまでにない異世界ビジュアルを実現した。
企画初期、新井が最初に取り組んだのが、現実とワンダーランドの境界となる「橋のボード」の設計だった。新井が「最初に描いたのは、ワンダーランドの各エリアをまたぐ橋のシーンです。以前オックスフォードを旅行したときに撮った写真をもとにしました」と語るように、実際の風景をヒントにしたこのボードには、アナログ感のある筆のタッチや余白をあえて残し、現実世界との差別化が図られている。この一枚が作品全体のビジュアルコンセプトを方向づけることになり、「絵本の世界に入り込んだような感覚を出すにはどうするか」という議論が、以降の美術方針にもつながっていったと振り返っている。
幻想的な建築物の設計も、新井が手がけた大きなパートのひとつ。ハートの女王の城は、「どこから見てもこちらを見ている監視塔」のような構造として提案し、RPGに登場しそうな不穏さと遊び心が同居するデザインに仕上げた。「ゲーム的なギミックは、むしろ異世界を描くアニメにこそ合う」と語る新井の提案は、篠原俊哉監督にも高く評価されたという。
マッドハッターと三月ウサギとお茶会をするマナーハウスでは、“不条理さ”をどう空間で表現するかが大きなテーマとなった。「現実ではありえないけれど、ワンダーランドでは自然に感じられる形」を目指し、篠原監督と喫茶店で何時間も意見を交わした末に、“斜めの家”というギミックにたどり着いたという。「この作品において、物語としてのおもしろさと空間的な楽しさを両立するには、構造から狂わせる必要がありました」と語る。
ビジュアル全体を彩る“水色”も、新井の強いこだわりが詰まった要素のひとつだ。「アリスのイメージカラーといえば水色。今回は、それを意識的に取り入れました」と話すように、空、湖、涙など、多くの場面で水色が繰り返し使われている。中でも、りせの感情の高まりが空間に反映される“涙が海になる”シーンでは、水の色味や質感にまで細やかな設計が施された。新井は「ギミックや造形と同じくらい、“色”も世界観を語る上で大事な要素だと考えています」と語っている。
新井は本作を楽しみにしている人に向け、「一番の願いは、りせとアリスのことを好きになってもらいたいということです。映画をご覧になった方に、“りせやアリスに会いに、またワンダーランドへ行ってみよう”と思っていただけたら、自分としてもいい仕事ができたのかなと思いますね。不条理もいっぱいな不思議の国の世界を、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです」とメッセージを寄せた。
■公開情報
『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』
8月29日(金)全国公開
キャスト:原菜乃華、マイカ・ピュ、山本耕史、八嶋智人、小杉竜一(ブラックマヨネーズ)、山口勝平、森川智之、山本高広、木村昴、村瀬歩、小野友樹、花江夏樹、松岡茉優、間宮祥太朗、戸田恵子
原作:『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル)
監督:篠原俊哉
脚本:柿原優子
主題歌:SEKAI NO OWARI 「図鑑」(ユニバーサル ミュージック)
アニメーション制作:P.A.WORKS
配給:松竹
製作幹事:松竹、TBSテレビ
©「不思議の国でアリスと」製作委員会
公式サイト:https://sh-anime.shochiku.co.jp/alice-movie/
公式X(旧Twitter):@alice_movie2025