大森南朋の魅力は“目の演技”にあり 『大追跡』伊垣役で立ち上げる“多声的”な刑事像
大森の大きな魅力は、“ひたむきさ”や“熱量”をたたえた目の演技ではないだろうか。事件の真相に近づこうとする意志や正義感で突き進む衝動など、真っ直ぐに見つめる眼力の強さがその感情を増幅させる。
また、その眼力は、ヒール役においても威力を発揮する。映画『アウトレイジ 最終章』(2018年)では、ビートたけし扮する主人公・大友を慕い、彼と共に暴走を巻き起こす市川を演じ、目力とたたずまいだけで圧倒的な“狂気”を漂わせていた。
大森南朋が語る、念願の『アウトレイジ 最終章』出演への思い 「僕にとって本当に宝物」
北野武監督最新作『アウトレイジ 最終章』が10月7日に公開される。『アウトレイジ』シリーズ最新作にして完結編となる本作。日本と韓…“シリアス”“こわもて”のイメージが強かった大森の転機となったのは、『私の家政夫ナギサさん』(2020年/TBS系)であろう。多部未華子演じる生活力のないキャリアウーマンの元へ派遣された50歳の家政夫役を演じ、そのコミカルな演技で“おじかわ”と話題になり、また一つ、演技の幅を広げている。
2025年4月期の月10ドラマ『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)では、北川景子演じる主人公・中越紘海に憎まれ、また自身も苦悩を抱えている結城旭役を熱演。当初は憎まれて当然というような冷酷さを見せつつ、徐々に完全な悪ではない側面が見えてくる複雑な役どころであったが、大森だからこその“ちら見えの温かさ”がピリリと効いていた。
実は大森は音楽好き。10代からバンド活動をしていたが、全く芽が出ず20代で一度挫折している。しかし、近年、ロックバンド「大森南朋& THE OLD BLUE BANDITS」のボーカルとして精力的に音楽活動を展開し、2025年1月にはアルバムを発売。「50歳を過ぎてから、映画もドラマも音楽も、何をやっても楽しい。長めの余生が始まっている感じ」と語っている(※1)。
その“楽しい”感じは、画面を通して見ている側にも伝わってくる。『大追跡』では、真摯に事件の真相を追うシリアスな役どころではあるが、青柳とのやりとりでは肩の力が抜けた軽妙さがある。また、捜査一課の係長・八重樫(遠藤憲一)が「はうっ」と言い淀み、コメディ担当を謳歌している本作だが、第3話では名波に詰め寄られ言葉に窮した伊垣までも「はうっ?」と口走るシーンがみられた。シリアスさとほっこりさを自在に行き来できるのも大森の空気感があってこそ。
“デジタル捜査の最前線”としてSSBCを盛り上げていきたい名波、徹底した“現場主義”にこだわる旧体制側代表の青柳、そしてその両者をブリッジする伊垣。双方の力をどう引き上げ、どう結集させ、現代の捜査をアップデートしていくのか。大森の演技の振り幅が、どのように活かされるのか、今後の展開にも期待したい。
参考
※1. https://hochi.news/articles/20250207-OHT1T51144.html?page=1
2009年に警視庁に新設された分析・追跡捜査の専門部隊「SSBC=捜査支援分析センター(Sousa Sien Bunseki Center)」を舞台に、そこを取り巻く人間模様を描く。
■放送情報
『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00~放送
出演:大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒、伊藤淳史、髙木雄也、足立梨花、丸山礼、野村康太、佐藤浩市、遠藤憲一、光石研ほか
脚本:福田靖
監督:田村直己、豊島圭介、小松隆志
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:黒田徹也
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、目黒正之(東映)
音楽:沢田完
制作:テレビ朝日、東映
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