『あんぱん』“いせたくや”大森元貴の才能の片鱗 のぶと嵩も幸せな結婚生活をスタート
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第91話では、いせたくや(大森元貴)が初登場。出演時間はわずか3分ほどだったが、朝の眠気を吹き飛ばすかのようなフレッシュな存在感を残した。
多くの人から祝福を受け、中目黒の長屋で慎ましくも幸せな結婚生活をスタートさせたのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)。くら(浅田美代子)の葬儀を終え、東京に戻ったのぶは鉄子(戸田恵子)から秘書に任命される。前任の世良(木原勝利)が事務所を構え、独立したのだ。あの30秒カウントが聞けなくなると思うと寂しくなる。とはいえ、のぶには別れを惜しんでいる間もない。融通が利く有能な世良の代わりを務めるのは大変で、のぶの生活はさらに目まぐるしくなった。
一方、嵩も三星百貨店の宣伝部で一目置かれる存在に。美術学校で磨き上げたセンスと、高知新報で鍛えられた仕事の速さで大活躍。人生に無駄なことは一つもないのだと思わされる。一つ仕事を終えると、またすぐに次の依頼が入る状態で、漫画を描く暇もなさそうだ。
そんな中、三星百貨店の中にある三星劇場で、頼光四天王の一人・渡辺綱が人食い鬼の退治に名乗りを上げる名作映画『戻橋』の舞台版が上演されることになり、嵩はそのポスターを制作することになる。座長の大根(青柳翔)は戦地で慰問団の芝居を見たことがきっかけで演劇に目覚めた。そのため、宣撫班で紙芝居紙を作っていた嵩とは意気投合。カフェで熱く語り合っているところに、突然声をかけてきたのがいせだ。
いせたくやは、「見上げてごらん夜の星を」「いい湯だな」など数々の名作を手がけた作曲家・いずみたくがモデル。やなせたかしとは作詞家、作曲家として誰もが知る童謡「手のひらを太陽に」を世に送り出した。出会いのきっかけは、いずみが作詞家の永六輔と制作したミュージカル『見上げてごらん夜の星を』にやなせが美術担当として参加したこと。いずみは幼い頃から両親の影響で音楽だけではなく、演劇にも親しんできたのだ。
いせも芝居が大好きで、嵩と大根の話を小耳に挟んでいても経ってもいられなくなったのだろう。演劇学校に行き、自分で劇団を作ったものの、うまくいかずに途方に暮れていることを早口でまくし立てるように打ち明ける。大森元貴といえば、Mrs. GREEN APPLEのボーカルということは周知の事実。卓越した歌唱技術もさることながら、聴き手を楽曲の世界観に引き込む表現力がずば抜けている。その力は映画『#真相をお話しします』でも大いに発揮されていた。ドラマ出演は今作が初だが、拙さは一切感じられない。見知らぬ大人の会話に突然割って入る、若さゆえの愚直さをコミカルに表現しつつ、まだ芽吹いていない才能の種が確かに見える演技だった。
戦後復興が進むとともに新時代の若き才能が続々と育っていった時代。大根から手嶌治虫作画の漫画『新宝島』を渡された嵩は、その圧倒的な画力に打ちのめされる。そんな嵩にのぶが「たっすいがーはいかん」と差し出したのは、漫画の懸賞広告。以前も嵩は、千尋(中沢元紀)に漫画の懸賞応募を勧められたことがある。弱きな嵩の背中を「出すだけでも出してみいや」と強く押してくれた千尋。結果、嵩の漫画は入選し、その漫画が高知新報に入社するきっかけを作った。そのことを思い出した嵩は意を決して、漫画を描き始める。どうか幼い頃から抱いていた漫画家になるという夢実現の足がかりとなりますように。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK