渡辺翔太の「おかえり」で成仏したい 『事故物件ゾク 恐い間取り』でホラー映画苦手を卒業

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。今週は、ホラー映画が苦手なのになぜか2回連続でホラー映画を選んだ佐藤が、映画『事故物件ゾク 恐い間取り』をプッシュします。

『事故物件ゾク 恐い間取り』

 「ホラー映画が苦手」と冒頭で述べたが、本作はまさに“ホラーに抵抗がある人”にこそ届いてほしい作品だ。恐怖演出だけに頼らず、人間と幽霊の関係性を通じて「なぜそこにいるのか」「何を伝えたいのか」といった背景に丁寧に寄り添っていく構成は、ジャンルの枠を超えて人間ドラマとして成立している。

 なかでも、Snow Manの渡辺翔太演じる主人公・桑田ヤヒロの在り方がユニークだ。彼は幽霊を一方的に排除しようとせず、まず“話を聞こう”とする。その姿勢は、霊感の強い体質のゆえに心霊現象に巻き込まれる日々を送っていた『BLEACH』の黒崎一護を重ねたくなる。幽霊をただのホラー的記号として扱うのではなく、「理由のある存在」として真正面から受け止めるヤヒロの優しさが、作品全体に温度をもたらしているのだ。

 本作は、いわくつき物件に住み続ける芸人・松原タニシの実体験をもとにした大ヒットホラーの続編。前作に続き中田秀夫監督がメガホンを取り、今回は「必ず憑りつかれる部屋」「いわくつきの旅館」「降霊するシェアハウス」と、怪異のスケールも格段にアップ。優しすぎて憑りつかれやすい主人公のまっすぐな心が、心霊現象にどう作用するのかも見どころとなっている。現代的な設定に加え、実在の事故物件公示サイトを運営する大島てるも登場しており、まさに事故物件好き必見の一作だ。

 そもそも、なぜ今「不動産ホラー」がこれほどまでに注目されているのだろうか。やはり背景には、家賃の安さを求めて日常的に物件情報をチェックする人が増えたり、“住まい=安心”という感覚が揺らいできていることがあると思う。私自身、高校を卒業して一人暮らしを始めたタイミングがちょうどコロナ禍だった。家に向き合う時間が増えたことで、『家』という極めて身近な空間が、他人の過去と密接に結びついていることに気づくようになったのかもしれない。これを入り口に、今まで見過ごしてきた“場所の記憶”に敏感になったのだと思う。

 だが、ホラーが苦手な私にとって不動産ホラーは効果バツグンで、観た日の夜は常夜灯を明るめにしないとまったく眠れない。にもかかわらず、なぜかまた次の週もホラーを観たくなる。この恐怖と安心の微妙なバランスにハマってしまっているのかもしれない。

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