相葉雅紀が『大追跡』のキーマンに テレ朝伝統“刑事もの枠”をアップデートできるか
脚本の体制についても触れておきたい。代々、この“水曜9時”枠は、複数の脚本家が担当するケースが多かった。『相棒』しかり『刑事7人』しかり、直近の『特捜9』も例外ではない。しかし、本作『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』においては、脚本は福田靖のみの1人体制なのだ。福田は『HERO』(2001年~/フジテレビ系)、『DOCTORS ~最強の名医~』(2011年~/テレビ朝日系)、大河ドラマ『龍馬伝』(2010年/NHK)といった大ヒットドラマを数多く生み出したヒットメーカー。とはいえ、1人で刑事ものの連続ドラマを担当するのは相当に負荷が高いと思われる。一課長・八重樫役の遠藤憲一が「福田靖さんが全話執筆されると聞いて、びっくりしました」とコメントしていたり(※2)、福田自身も「今年で脚本家生活30年になる私ですが、今まで使ったことがない脳みそを使っているような感覚で書いています」と言っている(※3)。
いったいなぜ、“1人体制”が採用されたのか。それは、本作が海外ドラマにおける“パイロット”的な位置付けだからではないだろうか。海外ドラマでは、第1話を“パイロット”と呼んだりする。英単語“pilot”には“試験的な”という意味があり、つまり“初回のエピソードは試験的に作られた”ということでもある。放送局はまずパイロット版を作り、作品のトーンや主要キャラクター、包括的なストーリーを見て、正式に“フルシリーズ”として製作するか否かの判断をするのだ。ひとたび製作が決定すると、作品のDNAがぎゅっと詰まったパイロット版を羅針盤として、脚本家がチームで第2話以降を展開していくというのが一般的である。
本作『大追跡』は、現時点でシリーズ化されるかどうかまだ決まっておらず、今クールの結果如何というところが大きい。そういった意味で、本作は海外ドラマにおける“パイロット”的立ち位置に近いと言えるだろう。
“新しい刑事ドラマ”として盤石な基盤を作り、長く続く“王道”に育てていきたいとの意気込みは高い。そのためにまずは福田の1人体制で、丁寧にキャラクターたちを作り上げ、十分に練られた構成で思いやテーマ性を全話に行き渡らせつつ、ぶれのない“大追跡ワールド”を構築していくということなのだろう。
「SSBCはあくまで裏方」ととらえる捜査一課のありようを“旧来型”とするならば、「SSBCは現代における犯罪捜査の要」と考える名波は“新しい時代の象徴”でもある。名波はバディとなる伊垣修二(大森南朋)と共にいかにSSBCを変えていくのか。また捜査一課との関係性、犯罪捜査のアプローチはどう変わっていくのか。今後のドラマの展開を見守りたい。
参照
※1. https://x.com/ken_12817/status/1929910079148699906
※2. https://realsound.jp/movie/2025/06/post-2072119.html
※3. https://realsound.jp/movie/2025/06/post-2041312.html
2009年に警視庁に新設された分析・追跡捜査の専門部隊「SSBC=捜査支援分析センター(Sousa Sien Bunseki Center)」を舞台に、そこを取り巻く人間模様を描く。
■放送情報
『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』
テレビ朝日系にて、7月9日(水)スタート 毎週水曜21:00~放送
※初回拡大スペシャル
出演:大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒、伊藤淳史、髙木雄也、足立梨花、丸山礼、野村康太、佐藤浩市、遠藤憲一、光石研ほか
脚本:福田靖
監督:田村直己、豊島圭介、小松隆志
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:黒田徹也
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、目黒正之(東映)
音楽:沢田完
制作:テレビ朝日、東映
©テレビ朝日
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