第21週の週タイトルは「米田家の呪い」で、『おむすび』が一貫して取り上げた「我が身を振り返らず、困っている人を助ける」ことの意味を掘り下げている。米田家の呪いをもっとも強烈に体現してきたのが永吉だ。永吉は、体面や人からどう言われるかを気にしていない。目の前に困っている人がいたら自分ができることを全力でやる、というシンプルな行動原理を持っている。

　シンプルなだけに周囲への影響も大きい。聖人だけでなく、家族は永吉に巻き込まれて大変な目に遭ってきたはずだ。ちゅうちょするのは当然だが、なんだかんだ言って一緒に笑い合って家族としてやってきたのは、永吉の思いを理解しているから。歩（仲里依紗）が新ブランドのコンセプトに掲げた「全ての人をファッションで元気にします」からも、そのことは伝わってくる。言葉にならない部分で米田家はつながっていると感じる。

　北村有起哉が松平健の髪をカットする場面は、そんな言葉にならない感情が交錯する名シーンだった。第100話で、家族に囲まれた聖人が「俺の人生、間違ってへんかったわ」と述懐する場面があった。聖人を大阪万博へ連れて行けなかったことが、永吉には心残りだったわけだが、家族に負担を強いていることを永吉は気にしていたのだろう。親子2人の散髪は、永吉にとっても、自分の人生は間違っていなかったと思える瞬間だったのではないだろうか。

　葛藤・対立を軸とする三幕構成の作劇に対して、調和と献身は食い合わせが悪いようにも思われる。「利他」というテーマを追求した今作で、塩味の強い永吉は辛子高菜のような存在感があった。『おむすび』に毒親はいなかったが、永吉がいたことで保たれた旨味があったことは心に留めたい。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送／毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送／毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送／毎週土曜10:15～11:30再放送
出演：橋本環奈、佐野勇斗、仲里依紗、麻生久美子、北村有起哉
語り：リリー・フランキー
主題歌：B'z「イルミネーション」
脚本：根本ノンジ
制作統括：宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー：管原浩
写真提供＝NHK