『おむすび』橋本環奈「好きだよ、バーカ」が微笑ましい 高校生活の集大成エピソードに

 『おむすび』(NHK総合)第34話は、結(橋本環奈)の高校生活の集大成だった。

 「おめを甲子園に連れてく」との宣言どおり、翔也(佐野勇斗)の福岡西高校は県予選を勝ち進み、甲子園への切符をかけて決勝の舞台に立った。結にとって大事な試合だ。この日のために「翔」の字を筆で大書し、ハギャレンのメンバーとスタンドからパラパラでエールを送る。声援にこたえて翔也は絶好調。初回から三者凡退に切って取る。試合は福岡西の優勢で進み、このまま行けば甲子園出場が決まる9回裏。ツーアウトの場面で、甘く入った球をバッターは真芯でとらえた。金属音が鳴り響き、打球は外野席へ弧を描いた。

 青春野球ドラマは、ほろ苦い幕引きとなった。9回を完投した翔也だったが、課題のスタミナ不足が最後の最後に出てしまった。気合が入るあまり、初回から飛ばしすぎたかもしれない。けれども翔也は落ち込んでいなかった。あんなに泣いていたのに、ケロっとした顔で次の目標を口にする。切り替えが早いのは全力でやりきったからだろう。

 翔也が結を呼び出したのは、約束を果たせなかったことを詫びるため。プロ野球選手になって、次こそは好きだと告白する、夢も結のことも諦めないと伝えるが、すでに気持ちは伝わっており、実質的に告白したのも同然の状態。ツッコまれて頭をかく福西のヨン様は、結の答えを聞いてガッツポーズするところも含めて、愛すべき体育会系男子だった。2年間待たされた結としては「好きだよ、バーカ!」と言うのが精いっぱいで、気持ちが追いつかないのも無理はない。ヘルメットをして、自転車で走り去るツンデレぶりが微笑ましかった。

 夢はどうするのかと心配する結に、翔也が発した「んなもん書き換えればいいべ!」はなかなかインパクトがあった。「人生は思いどおりにいがねえ。1回や2回、いや何度だって失敗する。最終的に夢にたどり着ければ、それでいいべ」はとても良い言葉だが、ピッチャーらしい考え方といえる。ヒットを打たれても点を取られなければいい。目前のバッターに集中することが大事で、最終的に試合に勝てばいいし、目指す目標にたどり着けばいい。非常にタフで現実的な思考である。

関連記事