第3話にして、大きな動きを見せたドラマ『全領域異常解決室』（フジテレビ系）。物語の本筋のすぐそばにいながらもほとんど関わることのなかった人物が、これから深く関わってくることになりそうなのである。その人物とは、そう、豊玉妃花だ。演じているのは福本莉子である。

　藤原竜也が主演を務める本作は、「神隠し」や「シャドーマン」、あるいは「キツネツキ」に「タイムホール」など、超常現象やオカルトの類をモチーフとして扱っているドラマだ。最先端の科学捜査をもってしても解明できない“不可解な異常事件”を、「全領域異常解決室」（通称「全決（ゼンケツ）」）という捜査機関が解決していくさまを描いている。この「全決」とは、異常事件に挑む捜査機関としては世界最古といわれるもの。あらゆる超常現象やオカルトの類も究明している特別な機関である。

　人々は異常な事件が起こるたび、自らを「神の一柱」だとし、「ヒルコ」だと名乗る人物を恐れている。しかしいまのところ「ヒルコ」が誰なのかは明かされていない。超常現象のスペシャリストにして「全決」の室長代理である興玉雅（藤原竜也）を筆頭に、彼の相方である雨野小夢（広瀬アリス）や、警視庁捜査一課・警部の荒波健吾（ユースケ・サンタマリア）が率いる「ヒルコ専従班」が、この謎めいた存在を追っているところだ。

　そんな本作で福本が演じる豊玉妃花は、まさに謎だらけの若い女性である。これまでの各エピソードで姿を見せながらも、冒頭で述べたように物語の本筋にまでは絡んでくることがなかった。しかし彼女は事件が起きるたび、いつも現場に姿を見せてきた。その登場の仕方が怪しげだったことから、おそらく私たち視聴者の誰もが彼女のことを「ヒルコ」だと踏んでいるのではないだろうか。

　事件現場の防犯カメラに映る豊玉を見つけた小夢は「彼女がヒルコ」だと断言していたし、第3話の終幕近くに用意されていた不穏過ぎるシーンで、「全決」との衝突を予感させる言葉を発していた。もちろん、これは視聴者のミスリードを狙った脚本上のギミックなのかもしれない。しかし、豊玉が今後の物語の中心人物になることは間違いないだろう。

　さて、ここまでは物語上の豊玉の役割について記してきたが、これを演じる福本のパフォーマンスには非常に興味深いものがあった。彼女の役どころは本作において圧倒的に異質なもので、ほかのどのキャラクターとも違うものだ。藤原や広瀬が演じる中心人物たちはもちろんのこと、本作に登場する誰もが、軸となる物語と関わり合ってきた。カメラに映る誰もが、「シャドーマン」や「タイムホール」といった超常現象と関わりのある人物を演じてきたのだ。

　けれども福本は違う。ほかの者たちと比べ、事件や超常現象との関わり方が彼女ひとりだけ違うのだ。豊玉がヒルコなのかどうかは別として、福本は自身の演じるキャラクターがほかの者たちとは明確に違うことを示さなければならなかった。この違いが私たち視聴者にうまく伝わらなかったとしても、「豊玉がヒルコなのでは？」という問いは生まれていただろう。だいぶ思わせぶりな言動を取ってきたのだから。