南沙良×伊藤健太郎が『光る君へ』もたらす新たな空気 賢子のあふれる笑顔が愛おしい

 本作でも、感情の機微を表す南の演技は魅力的に映る。自身を助けてくれた双寿丸に対し、純粋な好意と自分と全く違う生き方に対する憧れを向ける姿も印象的だが、母・まひろとの距離感の表現が絶妙だ。まひろの弟・惟規(高杉真宙)の死をきっかけにまひろとの距離は縮まった賢子だが、幼い頃に母と過ごす時間が少なかったことが尾を引いているようで、まひろが双寿丸に「娘が助けていただいたみたいでありがとう」と礼を言う場面でのどことなく気まずそうな視線が印象に残っている。

 とはいえ、「怒ることが嫌い」と言った自身の言葉にまひろが微笑んだことや、まひろが双寿丸が武者であることをさほど気にしていないことが、賢子の心のうちに残っていたまひろへの反発心を少しずつ取り除いているようで、双寿丸が「お前の母上、いちいち絡んでくるな」とツッコミを入れた時には、まひろと顔を見合わせておかしそうに笑っていた。

 なお、賢子を演じている南は、公式サイト内のキャストインタビュー動画「君かたり」で、双寿丸についてこう語っている。

「双寿丸は初めて会ったときに助けてもらって、たぶんもうそこですごくひかれていたと思うんですけど、自分とはやっぱり全然違う生き方をしてきたから、そこも含めてとても魅力的に賢子からは見えているんじゃないのかなと思います」

 賢子は平為賢(神尾佑)が武者たちを連れて盗賊を捕らえに行くところに出くわした時、双寿丸の姿を見つける。双寿丸もまた賢子に気づき、親しげに声をかけるのだが、この時に賢子が見せた嬉しそうな表情が照れているようにも見えて愛らしい。「帰ってきたら、また、うちに夕げにおいでなさい」と声をかけ、双寿丸を見送るまなざしには恋心だけでなく憧れも感じられ、南自身が語った賢子の心の内がありありと伝わってくるものだった。その後、素直に夕げを食べに来た双寿丸に「本当に来た」と大きな笑顔を向けていたのも心に強く残っている。

 賢子と双寿丸の交流は今後どう発展していくのか、気になるところだ。

参照
※ https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/blog/bl/pyVjX9MK7y/bp/pElNRR1k6e/

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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