『ドラゴンボールDAIMA』声優“交代”の評価は? 長寿作品ならではの戦略を考察

 『ドラゴンボールDAIMA』の第2話では、ドラゴンボールの力によって幼くなってしまった孫悟空たちが、冒険に出るまでの流れが描かれていた。SNSの感想では、幼くなったキャラクターたちの声優について言及する意見が多く見受けられた。今回は長年放送されてきたシリーズ作品における声優変更について考えていきたい。

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毎週金曜23時40分からフジテレビ系にて放送中のTVアニメ『ドラゴンボールDAIMA』の新キャスト12名が発表された。  本作…

 『ドラゴンボールDAIMA』の公式サイトでは、放送前からキャラクターやストーリーなどの情報が伏せられていた。通常、TVアニメ放送前でも各種イベントなどで発表された情報は、順次公式サイトにアップされる。主要登場人物などの基本的な情報すらも伏せられているのは稀だ。

 この措置について2つの目的が考えられる。

① 物語に関する情報を秘匿することにより、より驚きを与える。
② キャスト情報を直前まで秘匿しておきたかった。

 まずは①について考えると、『ドラゴンボール』ほどの国民的作品において、キャラクター情報を隠す必要性は薄いだろう。オリジナルだからこその驚きを与えたいという意図もあるだろうが、予告やPVではすでに幼くされた旧来のキャラクターなども公開されており、与えられた驚きは限定的なものだった。むしろ子どもの姿のデザインなどを積極的に開示していく方が、効果的だったのではないだろうか。

 そうなると、②が主要な理由と考えられる。声優変更の問題に関しては、SNSなどで炎上騒ぎが発生しやすい。TVアニメの場合、キャラクターは歳をとらないので作品そのものは制作できるが、声優はそうもいかない。年齢を重ねるにつれて、若い頃の声が出せなくなるという話もよく聞く。キャラクターの年齢と声優の実年齢は離れていき、10代のキャラクターを60代、70代以上の声優が演じ続けるのは、プロの声優といっても難しい場合もある。しかし、声優変更を発表すると、長年作品を愛し続けてきたファンからの反発が出やすいという状況が続いていた。

 近年では『THE FIRST SLAM DUNK』が、TVアニメ版から声優が一新されることが発表された際に炎上騒ぎとなった。しかし、結果的には映画が公開されると、作品のクオリティの高さもあり、声優の演技も含めて肯定意見が多くなり、興行成績も160億円を超える記録的なヒットとなった。(※)

 特に長年愛され、一定の間隔がありつつも放送が継続されてきた国民的アニメ作品ともなれば、声優交代の難易度は上がってしまう。近年ではいくつかの方法が試されているので、振り返っていきたい。

 『ドラえもん』は2005年に主要キャラクターの声優を一斉に交代し、当時大きな話題となった。また『ルパン三世』もこれに近く、栗田貫一と次元大介役の小林清志以外の声優が高齢化もあり総交代し、次元役も小林が亡くなると大塚明夫に引き継がれた。

 声優を総交代しない例では『サザエさん』が挙がる。複数の声優が放送初期から長年声を当てている作品だが、こちらは各キャラクターを、必要な時にその都度交代していく方式だ。また高齢化や逝去以外の理由でも『クレヨンしんちゃん』の矢島晶子が、しんちゃんの声を作りながら自然な演技ができなくなったと降板を申し出て、小林由美子にバトンタッチしている。他にも『ポケットモンスター』では、松本梨香がサトシから降板したわけではないが、主人公自体をキャラクターごと交代する選択をとっている。

 最近多くなってきているのは、主人公のみ声優を続投し、その他のキャラクターは変更するパターンだ。『美少女戦士セーラームーン』シリーズでは、月野うさぎ役の三石琴乃は続投しているが、その他のセーラー戦士は交代している。今回の『ドラゴンボールDAIMA』も似た形式であり、声優変更という表現は適切ではないかもしれないが、主人公の孫悟空役の野沢雅子以外、小さくなった後のキャストが変更されているという点では同じだろう。

 今回の声優に関する一連の流れにおいて『ドラゴンボールDAIMA』は理想的な工程を踏んでいると評価していいのではないか。本作はキャラクターを演じているキャストは変更されているが、声優変更ではない。文章にすると、とんちのようであるが、幼くなったキャラクターを演じているだけであり、大人のキャラクターは“続投”しているので、反発は生まれにくい。

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