草彅剛、“ずっとトライし続けたい”舞台での挑戦 「一番大事な仕事なのかもしれない」

 草彅剛が、ついに“演劇史上稀代の悪役”を演じる。12月6日より東京、京都、愛知で上演される舞台『ヴェニスの商人』にて、悪名高き金貸し・シャイロックに挑むのだ。ウィリアム・シェイクスピアによって1594年から1597年の間に書かれたとされている『ヴェニスの商人』。シャイロックは、その物語のキーを握る重要人物である。

 舞台は、中世イタリア。高潔な商人・アントーニオは、親友・バサーニオが富豪の娘・ポーシャに求婚するための資金を援助しようと、シャイロックを訪ねる。しかし、強欲な高利貸しで有名なシャイロックは、担保としてアントーニオの肉1ポンドを切り取ることを要求。すると、不運なことにアントーニオの財産を積んだ船が海に沈んでしまい、アントーニオは借金の返済ができない状況に。シャイロックは非情にも裁判を起こしてアントーニオを追い詰めて……。

 時代を越えて上演され続けてきた名作が、現代を生きる私たちに何を届けてくれるのか。そして、草彅はこのシャイロックをどのように演じるのか。そんな期待が膨らむ中、草彅が本作への意気込みから、公演中のルーティーン、舞台の魅力までたっぷりと語ってくれた。

YouTubeで調べて感じた、シェイクスピアの“匂わせ”

――今回、シェイクスピア作品「初挑戦」とお聞きしたのですが。

草彅剛(以下、草彅):そうなんです。ただ、オファーを受けたときにはすっかり忘れてたんですけど、若いときにシェイクスピア風の舞台をやっていたことがあったんですよね。「シェイクスピア、かじってたな」って(笑)。『フォーティンブラス』(『敗戦国の王子 フォーティンブラス〜オリジナルスマイル〜』)っていう舞台で、それは売れない役者の話なんだけど。「生きるか死ぬか」みたいなセリフがあったりして。当時20歳ぐらいの僕にはちょっと難しすぎて遠い存在のような気がしていたんですよね。それでも「なんて深いことをおっしゃる作品なんだ」って感じるものがあったのを覚えています。後に、その作品のおかげで、つかこうへいさんと出会うことになって、ありがたいことに場数を踏ませてもらって。こうして30年ぶりぐらいにシェイクスピアとの縁が回ってきたっていう感じですね。今の僕だから演じられるというか、なんかこれまで演じてきたいろんな役が僕の中で発酵してきたみたいな? あ、これ、ワインのおいしい国の話ですよね? だから、こうワインのようにね、熟成した匂いがする舞台になると思います。

――(笑)。では、『ヴェニスの商人』を演じるにあたってどのような心境ですか?

草彅:やっぱり初めてのことって楽しい要素がたくさんあるなと思いました。シェイクスピアさんが、もう何百年も前に書いた脚本がこうやって今も語り継がれているっていうのは、それだけの魅力があると思うので。この脚本を今やるっていうことが、僕にとっても、みなさんにとっても意味深いものになればいいなと。自分の中でいろいろ考えて、楽しんで、構築している感じですね。

――作品については、どう感じられましたか?

草彅:まずは自分なりに調べてみようと思ってYouTubeで調べてみたら、シェイクスピアさんは、この作品を喜劇で書かれてるって解説されてる動画がポロポロ出てきて。たしかにそういう要素もあるのかなと思いました。クライマックスでポーシャが男装して裁判をするとか、ちょっとエンタメ要素も入ってるなって思ったし、嫌われ者のシャイロックをとっちめて「そうだ、そうだ! ざまぁ見ろ!」ってみんなで笑っているところが、当時喜劇として楽しまれていたんだろうなって。ただ一方で「そうやってシャイロックをみんなで笑っていいの?」っていう。“匂わせ”っていうんですか(笑)? 「果たして、それで倫理的に正しいの?」みたいな。シェイクスピアさんの“匂わせ”も感じましたね。当時は、利子を禁じるキリスト教の考え方が浸透していた時代だったからシャイロックはもう「人としてありえない」って思われていたけど、今となってはお金を貸すときに利子を取るっていうのは当たり前のことじゃないですか。そこも時代によって捉え方が全然違うのも面白いなって。だからこそ、今の時代にこれをまた上演することも何か意味をね、私も“匂わせ”る感じでやりたいなと思います。

――演出の森新太郎さんとは、どんなお話をされたのでしょうか?

草彅:今みたいに、僕なりに考えてみたシェイクスピアさんの匂わせを話してみたら「賢いですね」って褒めてくれました(笑)。だから、きっといい人ですね! うまくやっていけそうだなと思いました。なんでも肯定してくれて話しやすい感じだったので。いいものが創り上げられるんじゃないかなって思います。

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