『おむすび』聖人と永吉の不仲の理由が明らかに “片思い”が滲む菅生新樹の表情の切なさ

「実は俺たち、付き合っとるんです!」

 幼なじみの陽太(菅生新樹)の突然の告白から始まった『おむすび』(NHK総合)第12話。結(橋本環奈)と陽太の間で何かしらの進展があると思いきや、聖人(北村有起哉)と永吉(松平健)が仲違いするに至った経緯が描かれた。

 陽太の告白で誰よりも落ち込んでいたのは父の聖人だ。外を向いてボーッとしている聖人を気遣う妻の愛子(麻生久美子)と祖母の佳代(宮崎美子)に対して、聖人を挑発する永吉。ここに来て聖人の不満が爆発して大喧嘩になり、聖人は飲みに出て行ってしまう。

 2人の仲の悪さは第1話から健在だったが、なぜここまで関係が悪化したのか。永吉は元々大型トラックの運転手だったが、父親が亡くなってからは家業を継いでいた。しかし、聖人が11歳のときに大阪万博のために大阪へ向かったっきり万博が終わるまで帰ってこなかったという。永吉は「遊んどったんやない。困っとう人ば助けよったたい」と語るが、本当のところは分からない。その後も、何か大きな出来事があるとトラックで出かけては、「あさま山荘の鉄球がついたクレーンを用意した」「引退式に遅刻しそうになっていた長嶋(茂雄)を後楽園まで送った」などのホラ話ばかり語る永吉に聖人はうんざりしていた。

 それだけではない。聖人は佳代が貯金してくれていた大学資金をギャンブルか何かに使ってしまったことが許せなかった。そんな聖人にとって転機となったのが、高校3年生のとき。理髪店の主人から神戸に引っ越すという話を聞いた聖人は、「おやっさん、お願いがあるんですけど」と一緒に神戸に連れて行ってもらうことにしたのだ。「神戸なら俺は認めんぞ」と聖人の決断に反対する永吉だったが、「聖人の好きなようにせんね」と応援してくれた佳代。聖人は糸島と農業も好きだったが、何よりも永吉のことが大嫌いだった。

「二度と糸島には戻ってこんつもりだった。あんなことさえなかったら……」

 “あんなこと”はここでは明言されていないが、きっと1995年に起こった阪神・淡路大震災のことだろう。どんな気持ちで故郷に戻ってきたのかを思うと胸が苦しくなるが、この災害をきっかけに聖人は糸島に戻って来るしかなかった。

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