『潜入兄妹』を『占拠』シリーズと絡めて考察 兄妹のどちらかが鳳凰の可能性も?

兄妹のどちらかが鳳凰の可能性もあり得る?

 『占拠』シリーズの視点で言えば渡良瀬兄妹は、『新空港占拠』で武装集団「獣」のリーダーである駿河姉妹(高橋メアリージュン/宮本茉由)のように、徐々に犯人の素性が明かされていく犯人の立場であり、今作はそこを主人公に据えた物語とも言える。そう考えると、『新空港占拠』では、獣の犯罪グループは、一枚岩ではなく、途中から分裂したり、ジェシーが演じた新見大河は最初から裏切り者としてスタンドプレーで真実を暴こうとしていたりしたが、それに近いものになってくるのかもしれない。

 また、『大病院占拠』で、病院を占拠する“鬼”のリーダー・青鬼こと大和耕一(菊池風磨)も、物語の冒頭で里親がガソリンスタンド立て籠り事件を起こして、主人公の刑事・武蔵三郎(櫻井翔)の発砲に起因する引火爆発事故で亡くなり、その真実を暴くことと復讐が悪の道に走った動機の1つで、『新空港占拠』でも父親の敵討ちが動機だった。そういった部分でも広い意味では前シリーズをトレースしているのも興味深い。あくまでも極論だが、もし鳳凰の存在が誰も顔を知らないとするならば、『新空港占拠』のラスボスがあの人物であったように、兄妹のどちらかが鳳凰の可能性だって十分考えられる。とは言え、今作は詐欺グループという正義の志を持った集団ではないので(個々では分からないが)、そこが致命的に違うことは忘れてはいけない。

詐欺グループの中にも幹部を恨む人物がいる可能性

 また物語を面白くする要因として、『占拠』シリーズでは不死身の武蔵刑事には妻と娘がいることで、主人公が自由に動けないというハンデ(時には事件解決の助け)があったが、今回は妹がそれに当たり、初回を観る限り頑固でスタンドプレーが多い妹と見受けられた。ホワイトハッカーという特殊能力や、咄嗟の機転がきく頭の良さがあり、兄よりも仕事ができるキャラではありそうだが、足枷となる展開も完全にあるだろう。こうした愛する家族のために戦う主人公という設定も引き継がれている。

 今後の展開はまだ読めないが、兄妹がいかに幹部に気に入られるよう様々な特殊詐欺で金を稼ぎサバイブしていくかはもちろんのこと、詐欺する相手も訳ありで、必要悪的なダークヒーロー的展開になるかもしれないし、それらが実はリーダーを炙り出す為の外堀を埋めていたという結果になりそうな予感もする。また詐欺グループの中に兄妹と同じように幹部たちを恨む人物がいるはずで、そことどう結託していくのか。さらに、早くも入間の目線や表情も怪しく、今作でも警察側に裏切り者がいる展開も当然想定されるし、ホワイトハッカーの妹が誰も見ていないラスボスとして犯罪組織をコントロールしていても不思議ではなく、前述したように既に兄妹の行動に視聴者が騙されているのかもしれない。

 まだ初回を終えたばかりなので、今回考察したものと全く違う展開になるかもしれないが、少なくとも『占拠』シリーズは真正面から黒幕を暴いていく物語だったのを、今回は犯行グループ側に潜入して黒幕にたどり着くという発想に転換してみせたのが実に面白い。『占拠』シリーズと同じ世界線だとしたら、『新空港占拠』のラストで脱獄した大和がどこかで関わってくるのか? そこも頭の片隅に入れておきつつ、今後登場するキャストや細かい描写に気を抜かず注目していきたい。

■放送情報
土ドラ10『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:竜星涼、八木莉可子、徳井優、入山杏奈、長尾純子、呉城久美、伊藤あさひ、岡井みおん、半田周平、フェルナンデス直行、神尾佑、及川光博
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
演出:大谷太郎、西村了(AX-ON)、茂山佳則(AX-ON)
脚本:福田哲平
音楽:ゲイリー芦屋
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ

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