三浦翔平が一手に引き受ける『光る君へ』の“闇” 狂気をはらんだ呪詛シーンの物凄さ

 光が強ければ闇も深くなる……まさに伊周にこそ伝えてあげたい言葉であり、三浦翔平が伊周を演じるにあたり鮮やかに、的確に体現しているポイントでもある。中関白家に生まれ、幼い頃から両親の期待を受けて、和歌、漢詩、笛、弓などあらゆる分野に秀で、眉目秀麗。若くして父の引き立てにより出世して、妹の定子は帝に愛され、輝くような青年期を過ごしたため、父の没後の不遇な状況を受け入れられないまま、出世する道長に恨みを募らせていく。「こんなはずじゃない」のは、すべて道長のせいに置き換えて、弱い自分と向き合えないのはプライドの高さゆえ。

 「長徳の変」で花山院の牛車を弓矢で射たことで、伊周と弟の隆家(竜星涼)が左遷されたときの衝撃は、伊周の心をさらに頑にしたようだ。変化を受け入れられない伊周とは対照的に自ら大事件を引き起こしておいて、とくに反省もなく新しい環境に適応していく隆家はたくましい。

 尊敬する両親から多くの愛情を受け、その期待に応えることでまぶしいほどの幼少期、青年期を過ごした伊周。その光に包まれるような日々が忘れられず生きるのは繊細な伊周にとって、つらいはず。自分が失ったものの大きさ、手に入らないものへの執着にばかり目を向けて生きるのは、どれほど苦しいことか……。

 今回、三浦翔平は大河初出演ということだが、美しく気高い平安貴族の光と影、闇までも繊細に表現していた。狂気をはらんだ凄みのある呪詛シーンは私たちの記憶に残り続けるだろう。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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