大泉洋&吉田羊、共演の多い2人だからできた芝居 「戦争について考えるきっかけになれば」

吉田羊「洋さんはお笑いに厳しいの(笑)」

(左から)吉田羊、大泉洋

――撮影を振り返って、特に印象深かったシーンを教えてください。

大泉:僕は現代から戦時下に行って、「歴史を知っている自分たちにできることがあるんじゃないか。多くの人たちの命を救おう」と提案したときに、奥さんが賛同してくれたことについて喜ぶシーンが「現代の夫婦らしくていいな」と思いました。なにより、「本当に大泉洋が妻に言ってるのかな?」というくらいにリアルでしたね(笑)。一番認められたいのはやっぱり妻だよね、と思いながら。でも、なかなかひかりみたいな方はいないですよ。世の中の奥さんは、そんなにわかりやすく旦那のことを認めてくれないから(笑)。

吉田:そんな夫婦、ドラマで観ていてもあまり面白くないしね(笑)。

大泉:たしかにね(笑)。

吉田:私が印象的だったのは、洋さんが子どもたちに「戦争は人を殺していい理由ではないんだ」と諭すシーンです。台本上はもう少しエモーショナルな書かれ方をしていたけれど、現場で洋さんが声を荒げることなく、一つ一つの言葉を大切に子どもたちに渡していく、という芝居に変えられたんです。静かだからこそ、より戦争に対する強い憤りがその背中から感じられて、まったく泣くシーンじゃないのにうっかりグッときてしまって。彼の思いに賛同した後の場面だったので、「この人と一緒にそれを成し遂げよう」とあらためて思ったシーンでした。

――大泉さんは、どのような思いからその伝え方に?

大泉:台本では、その後に妻が「大きな声出さないで」と言うんです。つまりは太一が大きな声で言っているわけなんですが、怒りにまかせて言ったところで、果たして子どもたちがそれを受け入れられるのかなと。実際に自分の子どもが戦争時代に流されて、「私たちも戦うんだ」「敵を倒すんだ」となったときには、やっぱりちゃんと伝えなくてはいけないんじゃないかな、という思いがありました。

吉田:山田さんも宮藤さんも、それぞれちょっと質の違うリアルな描写が得意なおふたりだと思いますが、そんな物語を大泉洋さんが感情に嘘をつかずに演じられているんです。台本に書かれているから言うのではなく、きちんと自分事として捉えて、リアルな感情で演じられているからこそ、一見不可思議な世界が成立しているなと現場で洋さんの芝居を拝見しながら思っていました。台本通りにやることはもちろんできるんだけれども、「いや、この景色を見た後に、親としてこのセリフは言えないよ」といった提案の仕方もされていて。そうやって役としての感情をご自分の思いとリンクさせて、大事に演じる洋さんだからこそ伝わることがたくさんあると思います。

(左から)吉田羊、大泉洋

――ドラマを観るのがますます楽しみになりました。共演回数の多いおふたりが夫婦役を演じるからこそ、よりお芝居が高まった、ということもあるのではないでしょうか。

大泉:それはもちろんありますね。やっぱり吉田羊さんという人は、とにかくお芝居がやりやすいんですよ。こちらの芝居を見事に受けてくれるし、面白いものを投げてもくれる。ドラマの前半には2人で夫婦ゲンカをするシーンがあって、監督が「おふたりのケンカは撮っていてとっても楽しい」と(笑)。僕自身、たしかに楽しいと思いながら演じていました。

吉田:ただ一つ、洋さんはお笑いに厳しいの。

大泉:あははは(笑)。

吉田:だからセリフの“間”とか、結構アドバイスはありました。

大泉:そんなことありましたか?

吉田:ええ、ありましたよ。私に直接言う場合もあれば、ご自身が私の面白さを引き出すためのフリをしなきゃいけないのに、タイミングを間違えて1人で延々と反省する、ということもありました(笑)。

大泉:あっはっはっは、あったね(笑)。もう一間、待ってから羊ちゃんのことを見なきゃいけなかったのに、「いやぁー、間違った!」って(笑)。

吉田:そうそう(笑)。お笑いにすごくストイックでいらっしゃるので、そういう面白いシーンはちょっと緊張しましたね。

■放送情報
『終りに見た街』
テレビ朝日系にて、9月21日(土)21:00〜放送
出演:大泉洋、吉田羊、奥智哉、當真あみ、今泉雄土哉、神木隆之介、田辺誠一、塚本隆史、西田敏行、橋爪功、勝地涼、三田佳子、堤真一
原作:山田太一『終りに見た街』(小学館文庫刊)
脚本:宮藤官九郎
演出:片山修
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、後藤達哉(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)、和田昂士(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日

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