『光る君へ』柄本佑が道長として演じ分ける“2つの顔” 『源氏物語』「若紫」誕生の瞬間も

 公式サイト内のキャストインタビュー動画「君かたり」で、柄本は彰子を思う道長の心境について、本来であれば彰子を入内させず、幸せに暮らしてほしかったが「いろいろな政に巻き込んでしまっているので、よりその中でも彰子さんが一番幸せをつかめるようにしてあげたい」「政治家としてというよりは、一人の父親として」娘を思い、行動している気がする、と答えている。

 だからこそ、「上巳祓」の日に彰子とまひろが話すのを見て、少し安堵したに違いない。まひろは奥ゆかしい彰子が少しずつ一条天皇に心を開くよう働きかけている。彰子もまた、そんなまひろとのやりとりには感じ入るものがあるようで、控えめな面持ちはそのままながらも、あらゆる感情が表に出てくるようになった。遠くで2人を眺めていた道長の口元が思わず緩む。ふと和らいだその顔は、政に向き合う時とは異なり、娘の幸せを望む父親そのものだった。

 物語の終わり、都では敦康親王(渡邉櫂)が病にかかり、火事が続くなど不吉な出来事が続いたため、道長は世の安寧と彰子の懐妊を祈願すべく金峯寺への参拝を決めた。道長が京を出立することを見込んで何やら企む伊周(三浦翔平)の動きはやや不穏だが、道長の一世一代の決断が実を結ぶことを願ってやまない。

 第34回では、『源氏物語』の登場人物である「若紫」が誕生する印象的な場面も描かれた。まひろは道長から褒美として贈られた扇を見つめた後、『源氏物語』の構想を練る。

「小鳥を追っていった先で出会ったあの人。あの幼い日から、恋しいあの人のそばで、ずっとずっと一緒に生きていられたら、一体どんな人生だっただろう」

 そんなことを思いながら、ふと傍らに留まった小鳥を眺めていると、その視線の先に幼い女子が現れた。まひろの頭の中に一人の少女の姿が浮かんだのだ。まひろが筆をとると、第31回で『源氏物語』が“舞い降りた”場面と同じ音楽が流れ、まひろの豊かな才が溢れ出す様が伝わってくる。若紫は、主人公・光源氏によって幼いうちに引き取られ、育てられる。本作における若紫の立ち位置は、まひろが選ばなかった道の続きだ。そして、まひろが俊賢(本田大輔)に伝えていたように、『源氏物語』の登場人物や物語に誰の姿を投影するかは読む人次第。一条天皇や彰子、公卿や女房たちが若紫をどのように解釈していくのかも気になるところだ。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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