『虎に翼』第15~22週の週タイトルの意味を解説 こんなにも多い“女”が入ることわざ

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』は、これまで仕事や家庭生活における、さまざまな男女格差を取り上げてきた。第106話で描かれた昭和31(1956)年の時点で、寅子(伊藤沙莉)をはじめとする、日本全国の女性裁判官の数は、増えてきたと言ってもたったの12名。法曹界は、まだまだ女性たちにとって狭き門だった。

 『虎に翼』の週タイトルは、そんな女性たちに関係することわざや慣用表現に「?」をつけたものとなっている。当サイトでは、すでに第14週まで紹介したが、今回は第15~22週までのタイトルの意味を解説し、内容を振り返ってみよう。

第15週「女房は山の神百石の位?」

 「女房は山の神百石の位」とは、「女房はきわめて大切なものである」という例え。

 寅子から新潟に異動することを聞いた際に、花江(森田望智)は「あなたは何も見えていない」と、寅子に対して怒りや不満を爆発させる。裁判官としてバリバリ働き、家族のために生活費を稼いでいると自負していたが、家のことは花江に任せっきりで、娘・優未(竹澤咲子)の気持ちにも寄り添えない寅子は、“昭和のお父さん”のような状態だった。そして、花江は寅子の“女房”のようになっていた。

 家庭を顧みていなかった寅子は、ずっと我慢を強いられてきた花江の本心を知り、決して妻ではないのに、常に家族を支えている花江が、いかに大切な存在か気づくのだった。

第16週「女やもめに花が咲く?」

 「女やもめに花が咲く」とは、「女がやもめになると、かえって身の世話がいき届き、男たちからももてはやされる」という意味。

 やもめとは未亡人のことを指すが、優三(仲野太賀)を亡くし、優未を連れて新潟地家裁三条支部に赴任した寅子は、職員や弁護士の杉田太郎(高橋克実)と次郎(田口浩正)の兄弟たちから、もてはやされるかのように歓迎される。これには、便宜を図ってほしいという、太郎たちの思惑があった。

仕事上はきっちりと線を引きつつ、新天地で優未ときちんと向き合い始めた寅子は、これまで自分が優三の死を受け入れたふりをしていただけのかもしれないと気づく。自分の気持ちを見つめ直した寅子は、優未に優三との思い出を語れるようになり、一緒に仕事をする航一(岡田将生)との距離も縮まっていく。

第17週「女の情に蛇が住む?」

 「女の情に蛇が住む」とは、「女の情愛は執念深く、深入りすれば恐ろしいものだ」という意味。

 寅子は、新潟で喫茶店「ライトハウス」を営む、学友の涼子(桜井ユキ)と、彼女のお付きの玉(羽瀬川なぎ)と再会する。華族の身分を失った涼子が、東京大空襲で足が不自由になった自分のせいで、好きに生きられないのではないかと悩む玉。

 家の存続のために結婚したが、夫のことを最後まで愛することができず、離婚した涼子にとって、玉は誰よりも大切な存在だった。寅子が間に入ったことで、2人は本心を伝え合い、より絆を深める。

涼子の母・寿子(筒井真理子)は戦時中に亡くなったが、亡くなる直前まで、夫に去られた後、独りぼっちの屋敷で時間をつぶす寂しさを涼子に訴えていた。涼子は違うが、寿子の情愛は執念深いものだったのかもしれない。

第18週「七人の子は生すとも女に心許すな?」

 「七人の子は生すとも女に心許すな」とは、「七人の子を儲けるほど長年連れ添った妻にも、気を許して大事な秘密を打ち明けてはいけない。女には気を許すな」という意味。

 地主の娘・美佐江(片岡凜)から、「先生は私の特別です」と言われ、赤い腕飾りを渡された寅子。街で頻発しているひったくり事件に関わる少年たちも、自分が美佐江からもらった腕飾りと同じものを持っていると知った寅子は、美佐江と少年たちとの関係に疑念を抱く。

 美佐江は周囲の人物を操って、犯罪に手を染めさせているようだが、いまだに明らかになっていない。第18週は、特に長年連れ添った妻が裏切るといった内容は描かれていないが、週タイトルは、少年たちが美佐江を信用できると思っていても、心を許して身を委ねてはいけない女性だということを示唆しているのではないだろうか。

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