『虎に翼』週タイトルの意味を解説 女性に向けられた偏見を示すことわざの数々

 弁護士になる夢を諦めざるを得なかった仲間たちの想いを一身に背負い、法曹界で女性が活躍するための道を閉ざさないために、つらくても苦しくても奮闘を続けてきた寅子(伊藤沙莉)。

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』は、そんな寅子をはじめとする女性たちへの偏見や決めつけをもとにした、ことわざや慣用表現に「?」をつけたものが、週タイトルになっている。第1~8週までの内容を振り返り、タイトルの意味を解説しよう。

第1週「女賢しくて牛売り損なう?」

 「女賢しくて牛売り損なう」とは、「女が利口な様子をして、でしゃばると、かえってその浅知恵を見すかされて、物事をやり損うことの例え」を意味する(※1)。

 女学校に通う寅子は、優三(仲野太賀)に弁当を届けるために明律大学を訪れ、たまたま桂場(松山ケンイチ)の講義を聴くことに。その後、穂高教授(小林薫)から大学の女子部法科への進学を勧められた寅子は、両親に進学したいと話すが、母・はる(石田ゆり子)は「頭のいい女が確実に幸せになるためには、頭の悪い女のふりをするしかないの」と言って、寅子に見合いを無理強いする。

 ところが、偶然出くわした桂場が寅子に「泣いて逃げ出すのがオチだろう」と言い放つと、はるは「そうやって女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰? 男たちでしょ!」と怒り、寅子に六法全書を買い与えた。

 第1週は、「女賢しくて牛売り損なう」と考えてきたはるが、寅子の可能性を信じた週となった。

第2週「女三人寄ればかしましい?」

 「女三人寄ればかしましい」は、「女」という字を三つ合わせると「姦(やかましいの意)」という字になるところから、「女はおしゃべりだから、三人も集まれば非常にやかましいということ」を意味する(※2)。

 明律大学女子部法科に入学した寅子は、華族令嬢の涼子(桜井ユキ)や、留学生の崔香淑(ハ・ヨンス)、弁護士の夫を持つ3児の母・梅子(平岩紙)、男装で異彩を放つよね(土居志央梨)らと同級生になる。

 男子学生にはからかわれ、新聞には面白おかしく記事にされるなど、世間は弁護士を目指す女性に冷たいムードが続く中、寅子とよねは離婚係争中の夫婦の民事裁判を傍聴する。明らかに妻が不利なこの裁判について、穂高は女子部で議論させ、寅子たちは妻が勝利する突破口を見出す。

 女性たちが集まり、かしましく議論した結果、良い方向へと進んだ週となり、タイトルの意味を覆すこととなった。

第3週「女は三界に家なし?」

 「女は三界に家なし」は、「女は、子どもの頃は親に従い、嫁いでからは夫に従い、老いては子に従うものだから、この広い世界のどこにも安住できるところがない」ことを意味する(※3)。「三界」とは仏教で、欲界、色界、無色界、すなわち全世界を表している。

 女子部法科の学生数が激減し、同科の存続が危機に直面した第3週。同級生と親しく付き合おうとしなかったよねも、居場所を守りたいと、「明律祭」の、女子学生に興味を持ってもらうための出し物である法廷劇に参加。寅子は、よねが家を出ることになった、彼女のつらい生い立ちを知る。

 さらに、寅子の兄・直道(上川周作)に嫁いだ、親友・花江(森田望智)が、嫁としての立場に悩んでいたり、涼子が桜川男爵家の後継ぎを産むように、母・寿子(筒井真理子)からプレッシャーをかけられていたりなど、寅子は女性たちが苦悩する“自分の居場所”について考えるようになる。

第4週「屈み女に反り男?」

 「屈み女に反り男」とは、「女は前に屈み、うつむき加減の姿が良く、男は胸を張った、反り加減の姿が良いということ」を指す(※4)。

 明律大法学部に進学した寅子たち。男子学生の花岡(岩田剛典)が「これからは男女平等だ」と歓迎しながらも、陰では「女は優しくすると、つけあがる」と話しているのを聞いた寅子は、花岡に対して不信感を抱く。

 親睦の目的で行われたハイキングでは、梅子の夫に妾がいると陰口をたたく男子学生たちに、寅子が激怒すると、花岡は、社会的地位が高く、経済力のある男性が妾を囲うことを正当化する。

 「屈み女に反り男」といった慣用表現が横行する、男性優位の世の中に、全く納得できない寅子だった。

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