『虎に翼』キャラクターを彩る衣装に注目 寅子のイメージカラーは“虎の黄色”?

 放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)は、あらゆる角度から楽しめる作品である。ほかの朝ドラと同様に、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)のサクセスストーリーだと読むことができるし、女性の社会進出に対して無理解が横行していた時代が舞台なだけに、フェミニズムやシスターフッドの観点から彼女たちを見守ることもできる。

 もちろん、家族間や友人間で交わされるやり取りが面白いのだから、シンプルに会話劇を堪能している方も多いはず。ここで、本作のちょっと変わった楽しみ方を提案してみたい。それは“衣装”に注目することである。寅子たちが身につける衣装はいつも、各登場人物のキャラクターを象徴し、作品に彩りを与えるものだったのだ。

 寅子が日常的にまとっているのは、黄色をベースにした暖色系の着物。色が与える視覚効果として、そばにいる者に寄り添うような温かみがあり、柔らかな春の日差しを思わせる。そうだ、“虎の黄色”というのもあるのかもしれない。

 華族の令嬢である桜川涼子(桜井ユキ)は、雑誌などにもたびたび取り上げられる存在とあって、もっともファッショナブルだった。といっても、ただ好きなものを身につけていたわけではなく、やはり上品なお着物。ほかの者たちよりは色味や柄が派手だが、決して嫌味なものではなかった。まさに“洗練された美”をそこに感じたものである。

 寅子の仲間たちの中でも最年長であり、優しく心強い存在であった大庭梅子(平岩紙)は3人の子どもがいる人物で、いつも紅や紫といったカラーの着物を身につけていた。これらはどこか母性を感じさせる、見ていて落ち着く色だともいえるし、“妻”や“母”という役割から脱して自らの意思により歩んでいこうという姿勢が反映された、情熱的な色だともいえるものだったのではないか。

 大きな夢を胸に朝鮮半島から日本にやってきた崔香淑/チェ・ヒャンスク(ハ・ヨンス)は、ジャケットにスカートを合わせたシンプルなスタイル。兄と二人暮らしで勉学に励む苦労人であったことが改めてフォーカスされていたが、一つひとつのアイテムの素朴さに、彼女の生活や背景というものが垣間見えていたものだ。

 涼子も梅子も香淑も、止むを得ぬ事情により法曹の世界から去っていった。何かしらの導きによって再会/再登場を願うばかりだが、果たしてどうか。

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