『カンフー・パンダ4』と『デューン2』が北米映画市場を席巻 中規模作品は厳しい状況続く

 春の北米映画市場は『デューン 砂の惑星PART2』と『カンフー・パンダ』最新作の2強が続いている。3月15日~17日の週末興行収入ランキングは前週に続き、第1位を公開2週目の『Kung Fu Panda 4(原題)』が、第2位を公開3週目の『デューン 砂の惑星PART2』が守った。

 ドリームワークスによる人気アニメーションシリーズの第4作『Kung Fu Panda 4』は、前週比-48.3%という変わらぬ支持の高さを示し、週末3日間で3000万ドルを記録。北米興収1億774万ドル、世界興収1億7649万ドルと堅実な興行を続けている。

 接戦を繰り広げた『デューン 砂の惑星PART2』は、週末3日間で2910万ドルを稼ぎ出して(前週比も-37%と粘り強い)北米興収は2億531万ドル。2024年の公開作品で2億ドルを突破したのは本作が初めてであり、また、海外興収も前作『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)を超える4億9471万ドルに到達した。2023年のストライキを受けた話題作不足のなか、期待された通りの役割をみごと果たしたというべきだろう。

 2024年の春興行は、このあと『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』(北米公開3月22日)と『ゴジラxコング 新たなる帝国』(北米公開3月29日)という大作2本にバトンを渡す。『Kung Fu Panda 4』と『デューン 砂の惑星PART2』の勢いも簡単には落ちないはずで、大手の映画館はしばらくのあいだ活況を取り戻すはずだ。

 そんな中、再び顕著になりつつあるのは、中規模映画やマイナージャンルの映画に集客が戻っていない現状である。R指定ロマンティック・コメディ『Anyone But You(原題)』が同ジャンルとして異例のヒットを記録したのはつい先日の話題だが、ランキングの第3位以下は上位2作との間に大きな差をつけられている。

Arthur the King (2024) Official Trailer

 第3位に初登場した『Arthur the King(原題)』は、マーク・ウォールバーグ主演の実話冒険映画で、アドベンチャーレーサーの主人公が、野良犬のアーサーや仲間たちと過酷な耐久レースに挑む物語。しかしながら3日間で750万ドルと、事前の「800万~1000万ドル」という予測を下回った。カナダでは劇場公開されないという特殊な条件下だが、それを踏まえても厳しい初動であることに変わりはない。

 正確な製作費は不明だが、Deadlineの報道によれば約4000万ドルと(作品の性質に照らせば)やや高額。当初はパラマウント・ピクチャーズが参加していたが離脱し、配給をライオンズゲートが担当することになった経緯がある。同社が負担したのは広報・宣伝費の約2000万ドルだけで、ビジネスとしてはさほど悪い案件ではなかったようだ。

 観客の評価は高く、Rotten Tomatoesでは観客スコア98%(批評家スコアは64%)、観客の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A」評価を獲得。したがってスタジオ側は口コミによる長期戦を期待しているものの、春の大作シーズンのさなかに公開したことがそもそもの誤りだったのではないかという見方もある。

 もっとも、ライオンズゲートはビジネスとして賢明な動きを続けており、公開2週目のブラムハウス最新作『Imaginary(原題)』も“まずまず”の健闘中。週末ランキングでは第4位、北米興収も1908万ドルと、3000館規模のホラー映画としては伸び悩んでいる感が否めない(仮にユニバーサル・ピクチャーズ配給だったらどうなっていただろう?)が、製作費1100万ドルと低予算だったのが勝因だ。むろん、そのことと業界全体の集客問題はある程度切り離して考えられるべきではあるのだが。

Love Lies Bleeding | Official Trailer

 今週の注目は、第6位の『Love Lies Bleeding(原題)』。前週に5館で公開されたのち、今週は1362館と一気に拡大公開された。クリステン・スチュワート演じるジムのマネージャーが、夢を追うボディビルダーの女性と激しい恋に落ち、暴力と犯罪の嵐に身を投じていくクライム・ラブストーリーだ。北米配給はA24が担当した。

 この作品も週末3日間で248万ドル(北米興収は276万ドル)と、興行規模を鑑みるともう一歩成績が伸びてほしいところだが、A24は今後さらに上映館を拡大する攻めの姿勢。監督・脚本は『セイント・モード/狂信』(2019年)のローズ・グラスで、Rotten Tomatoesでは批評家92%・観客89%とかなりの高評価だ。『Arthur the King』と異なるのは、春の大作映画とはターゲットがまるで異なるところ。日本公開の実現にも期待したい。

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