『ゲッターロボ』がアニメ史に与えた多大な影響 愛され続けるその魅力を紐解く

 永井豪と東映動画(現・東映アニメーション)のタッグで制作されたテレビアニメ『マジンガーZ』(1972年)の成功を踏まえ、同じ制作陣で放送された『ゲッターロボ』(1974年)。合体変形の新機軸が導入された『ゲッターロボ』は、人型ロボットが複数の乗り物で構成されている、あるいはメカの組み合わせを入れ替えれば外見と性能が異なるロボットに変わるという点で、ロボットアニメ史に多大な影響を与えた作品だ。

 今回、東映チャンネルで3月から放送されるのに先立ち、放送当時いかにこの作品が斬新だったかを振り返ってみよう。放送当時、いかにこの作品が斬新だったかを追ってみよう。

 3機のゲットマシン、イーグル号、ジャガー号、ベアー号はそれぞれ別々の搭乗者が操縦し、3タイプに合体するゲッターロボは、頭部に来るゲットマシン操縦者が戦闘主幹を取る。ゲッター1は空中、ゲッター2は地中、ゲッター3は海中の戦いに長けている設定であり、敵と交戦中に分離、合体を繰り返して違う姿になっていくさまが、子どもたちを魅了した。

 敵と戦う方法も、斧とビーム(ゲッター1)、高速移動とドリル(ゲッター2)、怪力とミサイル(ゲッター3)と、各タイプに変形することで変わるのも、常に単機で戦い抜いたマジンガーZとは大きく異なる。いうなれば合体変形という大技を採用したことで、1つの作品内に主役ロボットが3体も出るようになったわけで、同時期に放送された東映動画制作の『グレートマジンガー』(1974年)との差別化にも成功していた。

 登場人物の配置においても『ゲッターロボ』は秀でている。正義感の強い熱血漢リョウ、クールガイのハヤト、コメディリリーフで力持ちのムサシ、それにヒロインのミチルと、性格が違う者同士が組むため、チーム内の諍いが時々起きたり、出撃時にメンバーが揃わない、負傷した1人を2人がカバーしながら戦うなど、脚本にバリエーションをもたらした。

 主人公チームが熱血、キザ、三枚目プラス紅一点の取り合わせは今でこそ珍しくないし、むしろオーソドックス過ぎるきらいもある。さらに言うと性格が違う顔ぶれで構成されたチームなら、古くは『科学忍者隊ガッチャマン』(1972年)もあるのだが、東映スーパーロボットアニメ史にこうした図式を採り入れたのが、ゲッターの凄いところなのだ。

 敵組織・恐竜帝国の帝王ゴールは口論をする幹部2人を一喝し、「お前たちがつまらない言い争いをして、配下に示しがつくと思っているのか!!」と規律を正す注意をしたかと思うと、出撃前の部下には「必ずお前にゲッターロボを倒させてやる」と、やる気を起こさせる言葉をかけるのだ(第14話)。親を裏切ってしまったことを詫びる娘に涙するあたりは、ゴールもまた普通の感情を持つ一家のお父さんキャラであることを伺わせる(第22話)。

 帝国の支配者ユラーが登場してからは、汗を垂らしながら土下座する中間管理職の悲哀を感じさせ、ゴールのかわいそうメーターが急上昇。働きの良い長官を労って礼を言ったり、ユラーの「宴(うたげ)の準備をせい!」の号令にすぐさま動き、名もなき末端の部下たちにまで酒と御馳走を用意している(第51話)。厳しさの中にも、誉めたり酒を振る舞ったりと従業員たちの士気を高める、こんな理想の上司のもとで働きたいと思わせる人物像だ。彼が爬虫類だという点を除けば。失敗した部下の処刑など冷酷な顔を見せる回もあるが、ミスを犯した社員の処分は一般企業によくある光景なのでセーフだろう。

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