武井咲、“悪女=ダークヒロイン”として3年ぶり帰還 『顔』で後藤久美子と異色の演技対決
2024年のエンターテインメントシーンでは何が起こるのか。
さっそく、大きなうねりが生まれそうである。そう、二夜連続のスペシャルドラマとして、松本清張の『顔』(テレビ朝日系)が放送されるのだ。主演のひとりは武井咲。演じるのは“悪女”だ。3年ぶりのテレビドラマの場で、彼女はどんな暗躍ぶりを展開し、私たちを魅了するのだろうか。
松本清張の短編小説『顔』といえば、1956年に発表されて以降、たびたび映像化が繰り返されてきた名作である。岡田茉莉子を筆頭に、山﨑努、大空真弓、倍賞千恵子、戸田菜穂、谷原章介、松雪泰子といった錚々たる面々が主演俳優としてこの作品の看板を背負ってきた。そのひとりに、武井も名を連ねるわけだ。
今作が描くのは、殺人を犯した“覆面アーティスト”と、殺人犯を目撃した“弁護士”の対決。武井が演じるのはこの前者のほうである井野聖良。彼女は「顔を出さないこと」を理由にアーティスト活動をしているが、その理由は殺人を犯した過去があるから。その手で掴んだ「現在」と自ら犯した「過去」のはざまで彼女は揺れる。そんな聖良の前に、彼女が殺人現場から立ち去る姿を目撃していた弁護士・石岡弓子が現れるのだ。
「テレビ朝日開局65周年記念」と銘打たれたこのビッグタイトルだが、武井の登板には何の疑問も浮かばなかった。むしろこれがベスト。武井の世代でこの役を彼女以上に演じてみせる俳優はなかなかいないのではないか。それはもちろん、彼女が松本清張作品で主役を張った経験があるからである。
2017年に武井が主演を務めた『黒革の手帖』(テレビ朝日系)も、これまた何度も映像化を繰り返してきた作品だ。主人公の原口元子はかつて米倉涼子も演じており、同作は彼女の代表作のひとつでもある。米倉が立ち上げた元子像のイメージが強かったために不安視する声も多少はあったが、時代の節目を迎えようとしていた2010年代後半、現代社会をサバイブし、のし上がって行くさまを武井は体現。新たな元子像を世間に提示し、彼女もまた自身の代表作のひとつにしてみせた。
それまでは多くのきらびやかな作品を主軸に活躍してきた武井なだけに、この作品が彼女の俳優人生の分岐点になったのは間違いないだろう。2021年に続編『黒革の手帖 〜拐帯行〜』がスペシャルドラマとして放送されたことからも、武井への信頼度の高さがうかがえる。