『どうする家康』は“史実を守った”ドラマ? 脚本・古沢良太が明かす最終回に込めた思い
「自分でも思っていた以上の新しい家康像が出来上がった」
――『どうする家康』が始まる前の構想から終わりにかけて、古沢さんのなかで思ってもいない動きを見せていったキャラクターはいますか?
古沢:全員と言えば全員です。全てのキャラクターを計算ずくで書いていたわけじゃなく、書きながらこの場面だったらこの人はどうするか、どんなことを言うかっていうのを考えながら進めていたので、どのキャラクターも自分が思っていたよりちょっと違う、想像を超えるような働きを最終的にはしていると思います。でも、やっぱりいちばんは家康かなと思います。家康がどう変化していくかは割と最初に作っていて、基本的にはその通りなんですけど、途中で何回か松本さんと話し合いながら、家康が最後にたどり着く境地は書きながら見つかったものでした。自分の中では想像していなかったところにたどり着いた感じがあります。と言っても松本さんと話したのは3回ぐらいですけどね。非常に真面目な方なので、家康が変化していくタイミングで改めて確認したいということで、そこで話し合いながら僕の考えもまとまっていく感じでした。最後の撮影でお話しした時に、松本さんが「家康ってかわいそうですね」っておっしゃっていて。天下を取ってかわいそうって思われる家康って今までにないと思うから、それは自分でも思っていた以上の新しい家康像が出来上がったんじゃないかなと思いますし、そういうふうに感じてくれる人が多ければ幸せです。
――古沢さんが最終回に込めたメッセージがあれば教えてください。
古沢:僕はこの作品が家康の成長物語だと思って書いてきてはいないんです。そもそも「成長物語」という表現が好きじゃないのもあって。背が伸びるとかは成長なんだけれども、人間の内面的な変化を成長と呼ぶのは傲慢な話じゃないですか。誰かにとってその人が都合のいい方向に変化したら「あいつは成長した」って言うけれど、都合の悪い方向に変化するとダメになったというのは、それはその人にとってそう見えてるだけであって、本人にとってはまた別ですよね。この物語の家康は何か大きな喪失とか耐え難い挫折を経て、そのタイミングで変化しているので、僕の中では成長ではなく、「心が壊れていっている」というか。彼本来の人間らしさ、優しさ、弱さ、幸せを捨てていっているという解釈で僕は書いていました。その結果、みんなから怪物のように恐れられ、あるいは人ではない神のように扱われる。でも本当の彼は全然違うということを、ずっと観てきてくださった視聴者の皆さんには感じてもらえるんじゃないかと思っています。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK