『ザ・クリエイター』ギャレス・エドワーズ監督インタビュー “映画の未来”への懸念と希望

 10月20日に日本公開を迎え、週末3日間で興行収入1億6441万円、動員約10万人を記録し、週末の興行ランキングで1位に輝いた『ザ・クリエイター/創造者』。動員ランキングでは3位になったものの、オリジナルのSF映画では大健闘の結果と言えるだろう。監督を務めたのは、これまで『GODZILLA ゴジラ』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などハリウッドのフランチャイズ映画を手がけてきたギャレス・エドワーズ。先日プロモーションで来日を果たしたエドワーズ監督にインタビューを行い、フランチャイズ映画に対する見解や映画の未来について話を聞いた。

『ローグ・ワン』で却下されたシーンを実現!?

ーーオリジナルの企画でこれだけ大規模なSF映画はなかなか作れないことだと思います。実現できた秘訣はどこにあったのでしょうか?

ギャレス・エドワーズ(以下、エドワーズ):前作から7年待たなければいけなかったのはそれが理由です(笑)。英語で「Go big or go home」(日本語訳:中途半端にやってもしょうがない)という言い回しがあって、まさにそういうことなのですが、時には諦めて家に帰らなければならないこともあります。観客がどういう作品を観たいかを想定して企画を考えていくのがハリウッドなので、オリジナルの企画はなかなか通りにくいんです。その結果、いまはシリーズものばかりになってしまっています。だからこそ作り手としては、みなさんの好みがどんなものであっても、ぜひ映画館で映画を観て、我々をサポートしていただきたいと思っています。それが2年後、私たちが作ることができる作品に大きく影響してくるので。

ーーそれで言うと、監督は前々作の『GODZILLA ゴジラ』、前作の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』と2作続けてビッグバジェットのフランチャイズ作品を手がけられました。また別のフランチャイズ作品を手がけるという道もあったと思いますが、このタイミングでオリジナル企画に挑んだ背景を教えてください。

エドワーズ:そういうオファーがなかったからです(笑)。ひとつ言っておきたいのは、僕は「フランチャイズ」と「IP」という言い方が好きではありません。もちろん僕自身も小さい頃から観ていた好きなシリーズものもあるので、そういうオファーがあったらやりたいと思うかもしれませんが、今回の『ザ・クリエイター/創造者』を作っていて、本当に解放感を得ることができたんです。それまでのやり方には戻りたくないとも思いました。『ザ・クリエイター/創造者』では、8つの国に行って、グリーンバックを使わずに小規模のスタッフで撮影を行いました。実際撮影したものに、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)をはじめとしたVFXの会社にSFの部分をあとで付け加えてもらうというやり方をしたんです。このほうがフィルムメイキングとしてよりベターだと思いました。もしこのプロセスでやらせてもらえるのであれば、いわゆるフランチャイズ作品をまた手がけてもいいとは個人的に思っていますが、IPホルダーたちがその提案にGOを出すとは思えません。

ーー監督自身も『ローグ・ワン』や『GODZILLA ゴジラ』で経験されたと思いますが、フランチャイズ作品はそういった制約や指示が多いということですよね。一方で、作品的には『モンスターズ/地球外生命体』を含め、監督がこれまで手がけてきた作品の要素がふんだんに詰め込まれている印象でした。

エドワーズ:他の作品でやれなかったことや入れられなかったシーンを今回の作品で実践しているところはありますね。たとえば、自爆するドロイドなんかはまさにそうです。『ローグ・ワン』のオープニングシーンで、オーソン(ベン・メンデルソーン)がゲイレン(マッツ・ミケルセン)のところに行くシーンがありましたよね。実はあのシーンで、オーソンがロボ犬を従えていて、不信感を覚えたゲイレンに対してロボ犬を向かわせて爆発させるというアイデアがあったんです。スタジオからOKが出ませんでしたが……(笑)。いままで手がけてきた作品にはそういう“やりたかったけどできなかったこと”がいくつもあるんですが、そういうアイデアは常に自分のポケットの中に入れておくんです。メモを作って用意しているわけではありませんが、脳裏のどこかに常にあって、実際にそういうことができる作品に出会ったとき、そういうシチュエーションに遭遇したときに、再びポケットから出してくるようなイメージです。

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