『大雪海のカイナ』は目と耳と頭で楽しめる! 映像で再構築された弐瓶勉の唯一無二の世界観

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、実家で猫を4匹飼っているのに実は猫アレルギーを持っていたことが発覚した佐藤が『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』をプッシュします。

『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』

 砂漠化による水不足、水質汚染による水不足、人口増加による水不足といった人類が直面した“水資源問題”を描いた作品はこれまでにも数多く作られてきた。

 本作は、「軌道樹」と呼ばれるはるか上空にまで伸びる巨木が点在し、地上が「雪海」と呼ばれる胞子に覆われたことによって文明が崩壊した惑星が舞台となっている。

 胞子の見た目は、その名の通り私たちの世界でいう雪のような見た目をしており、作中でも「雪海」の中を進む船のシーンが印象的に描かれている。

 前に進んでいるはずの船でも、波が一切立たずふわふわとした胞子をかき分ける形で描かれていたり、胞子が水よりも圧倒的に軽いため、人間は浮くための「浮き袋」を用意しておかなければならなかったりと、単なる水不足ではなく、海も存在していないレベルの“どうしようもない水不足”が描かれている。

 
 また、文明が失われた中で“文字”という概念がほぼ失われた世界であるということも本作の大きなポイントの一つとなっている。主人公の少年・カイナは、この世界の中でも数少ない“文字の読める人物”であり、水不足の危機を迎える前の時代の遺跡に刻まれた古代文字を読むことができる。この世界に登場する古代文字が、視聴者である私たちが使用している文字と同じであるため、カイナと同じ目線で“文字”を認識できている感覚も、この作品ならではの面白さである。

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