『葬送のフリーレン』種﨑敦美&市ノ瀬加那に聞く、人生を支えた“恩師”との出会い

 2023年秋アニメの『葬送のフリーレン』の初回は『金曜ロードショー』で2時間スペシャルとして放送され、それ以降も日本テレビ系の新アニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で放送される。本作の前代未聞の試みには、放送前から多くの注目が集まっている。

 物語は、勇者一行によって魔王が倒された“その後”の世界を舞台に描かれる。今回は、主人公・フリーレン役を務める種﨑敦美、フェルン役の市ノ瀬加那に、役への想いや彼女たちの人生を支えた恩師との出会いなどを語ってもらった。旅路を共に歩むことになるフリーレンとフェルンだが、「エルフと人間」という視点の違いを2人はどう感じていたのだろうか。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

種﨑「フェルンがちっちゃくて大号泣しました(笑)」

ーー『葬送のフリーレン』はさまざまなテーマが内包されている作品ですが、今回のお芝居を通じて、どんなテーマを感じましたか?

市ノ瀬加那

市ノ瀬加那(以下、市ノ瀬):私は「人生」というテーマが、強く印象に残りました。この作品を観ていると、胸が苦しくなるけれど、切ないけど温かい気持ちにもなるんです。言葉にできない感情がいっぱい散りばめられているような作品だなと思ってて。人生の中にくだらない日常があってもいいなって、思えるような。人間とエルフで、時間の捉え方が全然違うからこそ、人生には終わりがつきものであることを感じさせられる瞬間もありますよね。

種﨑敦美(以下、種﨑):私は、原作を読みながら「時間の価値」について考える事が多かったです。作品からずっと哀愁とか郷愁のようなものを感じて、ずっと泣きそうというか、寂しいんです。言葉やシーンで明確に描かれているわけではないですが、周りと生きる時間があまりにも違う「葬送のフリーレンという存在」からそれを感じているのかな……と思います。人間はすぐ死んじゃうし、フェルンもすぐ成長しちゃうし……。

市ノ瀬:あっという間ですよね。(笑)

種﨑:そうなんです。人間の時間軸では、長い時をかけて成長してるのかもしれない。でもフリーレンから見たら、全てがあっという間なところにグッとくるというか。収録がもうだいぶ先まで進んでいるので、初回放送分を初めて観せていただいたときに、フェルンがちっちゃくて大号泣しました(笑)。

ーー『葬送のフリーレン』では、師弟関係やパーティーの新旧があるからこそ、それぞれのキャラクターが見せる表情も組み合わせによって少し変わります。その点の演技の工夫についてはいかがでしたか?

市ノ瀬 :フェルンは一見淡々としてるように見えるけど、人間らしい面がいっぱいあります。エルフと人間の対比を持たせるためにも少しだけ感情を豊かにはしていたのですが、塩対応の時の演技は難しかったですね。強くやりすぎると、途端にキツい印象になってしまいますし。

ーーどうやって今の声に落ち着いたのでしょうか。

市ノ瀬 :家でもいろいろ試行錯誤はしたのですが、やっぱり現場で出たものが本物だなっていうふうに思ったんです。実際、種﨑さんと小林さんの芝居を聞いていたら、元々考えていた枠を越えた感情が出てきたんですよね。繊細な物語でありながらも、種﨑さんのお芝居がギャグ調になるところは、予想以上にコミカルに演じている印象があって。でもまたそのお芝居が素敵なんです。なのでそれがフリーレンとフェルンの対比にもなっていたのかなと思います。

(左から)種﨑敦美、市ノ瀬加那

ーー フェルンといえば、原作で描かれるシュタルクへの塩対応も印象的です。

市ノ瀬:そうなんです。シュタルクのときの方が辛辣なイメージですよね。でもフェルンとしては、きっと今まで同い年くらいの男の子と関わることがなくて、どう接していいのか困惑しているところから始まってると思うんです。だから思春期の女の子ならではの、男子にツンとしちゃう感じもあるのかなとか思ったり。小林さんの、同年代の男の子っぽいシュタルクの芝居は、フェルンとしてツッコミを入れやすかったです。

種﨑:私も基本はその場のやり取りを1番大事にしたいなって思って、演じていました。なのでシリアスなシーンもギャグも、基本はその場で生まれるものを大切にしていて。

種﨑敦美

ーー フリーレンの声について意外と低めのアプローチに思われた方もいるのではないかと思うのですが、どういった演出がありましたか?

種﨑:だそもそも私は、原作を読んでて、フリーレンに「高い声のかわいらしいエルフ」というイメージは全然なくて。「声を発する」にあたり省エネな感じというか体に力が入ってなさそうだなという印象はあって。なので自分も体に力が入ってない、一番自然な状態で喋りたいと思って臨んだところ、オーディションの段階から、私の表現する「フリーレンの声」で特にディレクションもいただかなかったので制作側とそのあたりの解釈は一致していたのかな……? と思っています。ただ、初回の冒頭のシーンの収録時、声というよりはテンション感として「冒険の終わりだし、もう気の知れた仲間たちだし、もっと体温高くて大丈夫です」とディレクションをいただいて。そこからは、アニメの動きや表情に合わせて、原作から感じる印象より気持ち「体温高め」は意識しています。

ーーそうだったんですね。一方、市ノ瀬さん演じるフェルンは幼少期から青年期まで、身体的にも成長していきます。

市ノ瀬: そうなんですよね。声の印象としては、ハイターと一緒にいるときは、「早く一人前にならなくては」という焦りに気持ちの重点をおきました。ただ、フリーレンと出会ってからは、フリーレンがフェルンの良さをより引き出してくれるような感覚が私の中であって。ただ、カッコいい師匠だけではないフリーレンの日常を見て、「自分がしっかりしなくては」っていうふうに思ったり。そういう意味で、徐々に声の中に込めた感情の幅を広げて行ったのは、冒険が始まってからだと思います。

ーー「2人とも落ち着いた空気感が似ていて姉妹のよう」とシュタルク役の小林千晃さんがコメントされていました。種﨑さんと市ノ瀬さんは、それぞれお互い似ているところがあると感じていますか?

市ノ瀬:確かに……。2人で旅をしていたときは割と落ち着いた現場の空気感でしたね。

種﨑:その点シュタルクが入ってきてから急に賑やかになったというか(笑)。市ノ瀬さんとしっかりご一緒するのは初めてでしたし、フリーレンもフェルンもそんなテンション高いキャラクターじゃないのもあって、役者としても似ている部分があるのかなって最初思ってたんですけど。千晃さんはまだわかってないかもしれない……全然似てないです。(笑)

ーーどうしてそう感じたんですか?

種﨑:キャラのまんまなんですけど、私の方が緩いというか……。(市ノ瀬は)しっかりしてそうじゃないですか。でも実はきっと、ちゃんとしてない(笑)。……ないけど、一生懸命ちゃんとしようとしてるんじゃないかな?

市ノ瀬:見抜かれ始めてますね(笑)。声優の仕事を始めてからちゃんとしようと思いました。

種﨑:ある日のアフレコ終わり、私が黒いジャケット着ていて。そこに猫の毛がついてることを、千晃さんが教えてくれて。その様子を見るやすぐに市ノ瀬さんがマイコロコロを取り出してジャケットの毛を取ってくれて。「フェルンやん……」って思いました。そういうところも私とは違うなって。

ーー市ノ瀬さんはいかがですか?

種﨑:なんにも気にせず言っていいよ!

市ノ瀬:なんだろう……漢気あるなと思います。

種﨑:(笑)。

市ノ瀬:座長ということもあって、芝居で見せてくれてる感覚があるんですよね。キャラクターへの向き合い方も、学びたい部分がたくさんありました。種﨑さんが現場にいらっしゃると、引き締まる感じがします。

種﨑:いい方に影響してるといいんですけど、緊張させちゃってたら申し訳ないですね。

市ノ瀬:大丈夫です、もちろんいい方です(笑)。

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