ウィーンで「ハイル・ヒトラー!」の大斉唱 『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』本編映像

 7月21日に公開される『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』の本編映像が公開された。

 本作は、オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの『チェスの話』を映画化したサスペンス。1933年にヒトラーがドイツの首相に就任し、オーストリアにも反ユダヤ主義が広まったことから、ユダヤ人のツヴァイクは、1934年にイギリスへ亡命する。その後も場所を転々とし、1942年に本作を書いた。しかし、完成した直後に自殺を選んだために、これが最後の小説となった。ツヴァイク自身と重なる本作の主人公が、極限状況の中、心身を病みながらも、何とか生き延びようとする姿が描かれている。

映画『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』本編映像

 公開された本編映像は、ナチスがオーストリアに進駐する直前のウィーン市街の様子を克明に描いたワンシーン。ウィーンで公証人を務める主人公ヨーゼフと彼の妻アンナの乗る車が、ドイツ軍を支持する市民で埋め尽くされた街をゆっくりと進んでいる。不安そうに車窓を見つめるアンナは「今日は多いわね、正気を失ってるみたい」と呟く。だがヨーゼフは「日曜にも騒ぎは終わる」とあまり深刻に受け止めていない様子で、「未来が見えるの?」と尋ねるアンナに「新聞のおかげさ」と吞気に答える。

 しかし外を歩く市民たちの声は興奮を増していき、やがて“資産家を倒せ”、“ユダヤ人を追い出せ”といった旗を掲げた群衆に取り囲まれ、車は立ち往生してしまう。彼らは皆一様に腕章を身に着け、「ハイル・ヒトラー」とナチス式の敬礼を見せる者さえおり、辺りは異様な空気に包まれている。「新聞どおりだといいけど」と心配するアンナをよそにヨーゼフは「じき終わる」と現実から目を逸らすのだった。

 この衝撃的な映像はおよそ180人のエキストラが参加し、実際のウィーン市庁舎の真裏で撮影された、本作のなかでも最も大規模なシーンである。本作のプロデューサーであるトビアス・ウォーカーは「人前でナチスのシンボルを見せることは法律的な面でも複雑で、ウィーン市警察本部長の特別許可が必要だったんだ。180人が行進し、当時の歌を歌い、「ハイル・ヒトラー」と叫んだ時には、悪寒が背筋を走ったよ。もちろん、その一方で本作にとっては素晴らしいものだった。本物さながらだったからね」と撮影を振り返った。

 アンナを演じたビルギット・ミニヒマイアーは「辺り一面がナチスの旗や制服だらけで、恥ずかしく、恐ろしかった。人前であの撮影をするのはあまり楽しくなかったと言うしかないわ。最初から最後までとても緊張したの」と複雑な心境を明かしている。

■公開情報
『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』
7月21日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
監督:フィリッブ・シュテルツェル
原案:シュテファン・ツヴァイク
出演:オリヴァー・マスッチ、アルブレヒト・シュッへ、ビルギット・ミニヒマイアー
配給:キノフィルムズ
提供:木下グルーブ
公式サイト:royalgame-movie.jp
2021/ドイツ/ドイツ語/112分/カラー/5.1ch/シネマスコーブ/原題:Schachnovelle/G/字幕翻訳:川岸史
©2021 WALKER+WORM FILM, DOR FILM, STUDIOCANAL FILM, ARD DEGETO, BAYERISCHER RUNDFUNK 

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